仙台市の不動産売却|空き家をそのままにしておくとどうなる?押さえておこう行政代執行

人口減少の影響で、空き家は年々増えつつあり、2013年時点で約820万戸、2018年時点で約849万戸もの空き家があるといわれています。全国にある住宅の13%程度を占めているそうです。そのうちきちんと管理されておらず、老朽化した物件は約105万戸以上あります。空き家等対策の推進に関する特別措置法が制定されたことで、こうした空き家がどうなるのかについてご説明します。

目次

空き家等対策の推進に関する特別措置法とは?

日本では空き家問題が社会的な課題として注目されています。人口減少と高齢化の進行により、全国各地で使用されていない家屋が増加し続けており、これら放置された空き家は様々な問題を引き起こしています。これに対応するため、平成26年(2014年)11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空家等対策特別措置法)が成立しました。

この法律の主な目的は、放置された空き家によって生じる問題を解決し、適切な空き家の管理と活用を促進することにあります。法律では以下のような主要な措置が定められています。

  1. 空き家の実態調査
    自治体は空き家の実態を把握するための調査を行い、空き家の状況や問題点を明らかにします。
    この調査は、空き家対策の基礎となる重要なステップです。
  2. 空き家の所有者へ適切な管理の指導
    空き家の所有者に対し、適切な管理を行うよう指導します。
    これには、建物や敷地の定期的な点検、修繕の促進、不法投棄や害虫の防止策の実施などが含まれます。
  3. 空き家の跡地についての活用促進
    空き家やその跡地の有効活用を促進します。
    住宅地としての再利用、公共施設や商業施設の建設、コミュニティスペースとしての活用など、地域の実情に応じた多様な利用方法が考えられます。
  4. 適切に管理されていない空き家を「特定空家」に指定
    管理が不適切で、安全や衛生、景観上の問題を引き起こしている空き家を「特定空家」として指定することができます。
    この指定は、法的措置を講じるための前提条件となります。
  5. 特定空家に対して、助言・指導・勧告・命令ができる
    特定空家の所有者に対し、助言や指導、勧告を行い、必要に応じて具体的な改善命令を出すことができます。
    これにより、問題のある空き家の状況改善を促します。
  6. 特定空家に対して罰金や行政代執行を行うことができる
    改善命令に従わない場合、所有者に対して罰金を課したり、行政代執行によって強制的に問題を解決したりすることが可能です。
    行政代執行には、草木の伐採や不法構築物の撤去などが含まれます。

これらの措置は、放置された空き家がもたらす様々な問題を解決し、より良い住環境の実現と地域社会の活性化を目指しています。
空き家問題は単に個人の所有物の問題ではなく、地域全体の問題であることから、法律による明確な枠組みの下での対策が求められています。

行政代執行とは?

立ち退き義務や撤去義務など行政上の義務を果たさない人に代わって
行政機関が強制的に執行すること
(行政代執行法2条)

行政代執行とは、個人や団体が行政上の義務を果たさない場合に、行政機関が直接介入してその義務を強制的に履行させることを指します。
例えば、許可されていない場所で商売をしている人が何度注意されても店を閉じない場合、その店を物理的に閉鎖させるのが行政代執行の一つの形です。

ただし、行政代執行は、他の手段で問題を解決することができない、かつその状態をそのままにしておくと公共の利益に大きな害を及ぼす場合にのみ許されます。代替的作為義務と呼ばれる、他人が代わりに行えるような行為に関して適用されます。
逆に、特定の人にしかできない行為や、特定の行為を「しない」という義務については、行政代執行の対象にはなりません。

このような厳格な条件が設けられているのは、行政代執行が強大な公権力の行使であり、市民の自由や権利に大きな影響を与えうるからです。
そのため、原則として行政は、問題がある場合でもまずは指導や勧告など、より穏やかな方法で解決を図ることが求められます。

しかし、これらの対応にもかかわらず問題が解決されない場合があり、その結果、行政代執行に至るまでに長い時間がかかることも少なくありません。

ゴミ屋敷強制撤去

日本各地でゴミ屋敷の問題が社会的な注目を集めており、特に深刻な事例に対しては自治体が行政代執行による強制撤去を行っています。
ここで紹介する三つの事例は、ゴミ屋敷問題に対する自治体の取り組みの一例を示しており、問題解決には相応の時間と労力、そして費用がかかることを示しています。

1. 京都府京都市のゴミ屋敷

  • 概要: 2015年に条例に基づき行われた行政代執行で、京都市がゴミ屋敷の撤去を実行し、その費用を住民に請求しました。
  • 経緯: 2009年から約60回の面談を経ても改善が見られなかったため、強制撤去が決定。強制撤去までには6年がかかりました。

2. 神奈川県横須賀市のゴミ屋敷

  • 概要: 2018年8月に神奈川県内で初めてゴミ屋敷への行政代執行を実施。住民の名前が公表された後、屋外のゴミの強制撤去が行われました。
  • 経緯: 延べ100回の訪問・勧告にも関わらず改善されず、期限内に改善が見られなかったため強制撤去に至りました。

3. 愛知県蒲郡市のゴミ屋敷

  • 概要: 「蒲郡市住居棟の不良な生活環境を解消するための条例」に基づき、2019年に把握されたゴミ屋敷が強制撤去されました。
  • 経緯: 30回以上の訪問にもかかわらず改善されず、異臭や火災の危険性もあったため、2021年に強制撤去が行われ、撤去費用として400万円が住民に請求されました。

これらの事例から分かるように、ゴミ屋敷の問題は単に清掃の問題ではなく、公衆衛生や安全性、さらには近隣住民の生活環境に対する配慮など、多面的な観点からアプローチする必要がある複雑な課題です。
自治体による強制撤去は、最終的な手段として、長期にわたる努力とコミュニケーションの末に行われることが多いです。
ゴミ屋敷問題に直面している場合、自治体との連携や適切な対応が求められます。

高速道路の立ち退き

2015年に、北九州市から宮崎市までを結ぶ東九州自動車道の開通工事において、一部ミカン園が妨げとなっていたところ、ミカン園の所有者が用地買収に応じなかったため、福岡県が該当の土地を強制収用した事例があります。長年土地の所有者が反対してきたことから、約1億7千万円の補償金の受け取りを拒んだとか。とはいえ、倉庫などが収用され、新設する必要から経費は嵩むとのことでした。

このように行政代執行は、公益性が高い一方で、処分を受ける人には重大な影響を与えます。

行政代執行の3つのリスク

空き家を放置しておくと、行政から解体を命じられることがありますが、これを良いことだと思ってはいけません。
なぜなら、行政による強制的な解体には所有者にとって厳しい3つのリスクが伴うからです。

  1. 高額な解体費用が請求される
    空き家の強制撤去は無料ではありません。
    行政が代わりに解体作業を行った場合、その費用はすべて空き家の所有者が負担することになります。
    この解体費用は決して安くはなく、高額になることが予想されます。
  2. 財産が差し押さえられる
    解体費用の支払いが滞った場合、最悪のシナリオとして財産を差し押さえられることがあります。
    これは、借金の返済ができないときに行われる措置と同じで、所有者の経済的な立場を大きく損なうことになります。
  3. ニュースになって個人情報が晒される
    行政による強制撤去は、地域社会やメディアの注目を集めることがあります。
    その結果、所有者の名前やその他の個人情報が公に晒され、社会的な信用を失う原因にもなりかねません。

以上のように、空き家を放置しておくことには、重大な経済的・社会的リスクが伴います。
行政による解体を望むよりも、自ら適切に管理したり、有効活用の方法を模索したりすることが賢明です。

リスク①高額の解体費用を請求される

空き家の所有者が放置すると、行政から強制的に解体されることがありますが、この行政代執行には大きなデメリットがあります。
まず、解体費用は所有者が全額負担する必要があり、さらに行政が選ぶ解体業者は迅速な作業を優先するため、費用が高くなりがちです。
その結果、解体費用だけで1000万円近くかかることもあります。

もし空き家を放置しているなら、行政代執行を待たずに、自分でコストを抑えた解体業者を見つけて解体することが賢明です。
また、解体を面倒だと感じるなら、専門の買取業者に売却する選択肢もあります。
これらの業者は空き家を活用して利益を生み出す方法を知っているため、老朽化した空き家でも売却が可能です。
行政代執行のリスクを避けつつ、費用負担や手間を最小限に抑えるためにも、早めの対策を検討しましょう。

リスク②財産を差し押さえられる

解体費用の請求に応じない場合や、払えない場合は、所有者の財産が差し押さえられます。

差し押さえの対象となるもの

  • 現金
  • 預貯金
  • 株式
  • 貴金属
  • 給与の手取り4の分の一

国土交通省が令和3年2月4日に発表した資料「空家等対策特別措置法について」では、実際に財産差し押さえによって解体費を回収した事例が挙げられています。

場所千葉県柏市
建築年昭和46年9月
構造・面積など木造及び鉄筋コンクリート造などとの混構造
平屋及び2階建て3棟及び付属建物2棟
(延床面積:約633.1㎡)
状態老朽化による建物倒壊のおそれ
解体など工事費用1,040万
費用回収方法財産の差押え

参照元:空家等対策特別措置法について

上記の表を見ていただけばわかるように、実際に解体費用に1000万円以上かかることがあります。また、たとえ、何年も放置していたとしても、市町村や各自治体は固定資産税情報や戸籍を追って所有者を特定できるため、解体費用の請求からは逃れられません。

自己破産しても免除できない

解体費用が支払えない場合に、自己破産したとしても解体費用の徴収は免除されません。

自己破産とは、借金の返済等ができなくなってしまったときに、裁判所に借金返済の免責許可をもらえる仕組みのことで、破産法で認められています。

参照元:破産法第253条1項

しかし、空き家を放置し、行政代執行で解体された場合の費用は、国税が滞納された際のように「強制徴収」の対象となります。

これは自己破産しても免除されないため、請求された高額な解体費用は、給料や家財などを差し押さえられながら、長期間にわたって支払い続けなければならなくなります。

つまり、空き家をただ放置しておくことが、将来にわたって重大な金銭的負担や生活上のリスクに直結する可能性があるのです。

現時点で特に問題がないからといって、空き家をそのままにするのは絶対に避けるべきです。

リスク③ニュースになって個人情報が晒される

特定空き家に指定されたり行政代執行が行われたりすると、法律違反としてニュースやネットで公開されることがあります。

空き家の問題が特定空き家として指定されたり、行政代執行の対象となったりすると、その事実がニュースやインターネットで公開される可能性があります。
たとえその空き家が遠くにあるとしても、情報は簡単に広まり、結果として身近な人々、例えば職場の上司などにその事実が知られてしまう恐れがあります。
これが原因で、自己管理能力がないと見なされ、キャリアに悪影響を与えることや、社会的な信用を失うことにつながる可能性があります。
つまり、考えなしに空き家を放置しておくことは、自分が社会から「犯罪者扱い」され、社会的に不利益を被るリスクがあるということです。

実際に、神戸市では「神戸市空き家等対策計画」を策定し、特定空き家の所在地、必要な処置の内容、そして所有者の名前と現住所をネットで公表しています。

参照元:神戸市空家等対策計画(2021~2025 年)案

空き家を放置することはあなたの人生を左右するようなリスクしかありません。
こうしたリスクを確実に回避したいのであれば、空き家を専門業者に売却してしまうのをお勧めします。

行政代執行は他人事じゃない!空き家対策特別措置法

2014年11月「空き家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家対策特別措置法)が成立しました。その翌年の5月26日に施行されています。
この法律にいう「空き家」とは、長期間人が出入りしておらず、水道や電気も使用していない建築物のことです。

私有地内にある管理されていない荒れた空き家は、所有者の許可なく立ち入ることはできませんが、その状態が倒壊の危険性、景観への悪影響、衛生問題などを引き起こす場合があります。

これらの空き家は「特定空き家」として認定され、自治体から改善を求められます。自治体はまず助言や指導、勧告を行い、それに応じない場合は改善命令を出します。

命令を無視すると最大50万円の罰金が課されることがあります。さらに、問題が続く場合は、自治体が所有者に代わって直接介入し、例えば過剰に成長した樹木を伐採したり、倒壊の恐れがある建物を解体することがあります。

このプロセスは段階的に進み、早い段階での対応が求められます。

費用は所有者負担!所有者不明でも執行できる

行政代執行は、所有者が本来果たすべき義務を行政が代わりに実行するもので、その際にかかる費用は原則として所有者が負担します。

木造建築物の解体などには相当な費用がかかり、この費用は税金を使って徴収され、支払いが滞ると財産差し押さえのリスクもあります。

所有者が不明や故人である場合は、行政が費用を負担することになることもありますが、これは行政にとって大きな負担となります。

2015年から2016年にかけて22件の強制撤去がありました(約4,800万円)が、その中で所有者に費用を請求できたのはわずか7件であり、例えば所有者が亡くなり相続人も放棄しているケースでは、行政が全費用を負担することになりました。

このような状況は、公益を守るためには避けられないものの、行政資源には限りがあるため、課題となっています。

空き家を持っている人が押さえておくべきこと

空き家を放置することは、更地の場合よりは短期的に固定資産税が安くなるかもしれませんが、特定空き家と認定されると税金が最大6倍に跳ね上がるリスクがあります。

また、空き家は時間が経つにつれて急速に老朽化し、見た目が悪くなるだけでなく、害虫の発生や倒壊の危険性も高まり、近隣住民に迷惑をかけることになります。治療費などの責任問題も発生する可能性があります。

空き家の問題を放置せず、自治体の助成金制度を利用する、リフォームして賃貸に出すなどの対策を取ることが望ましいです。

さらに、定期的な状態チェックを怠らず、管理が難しい場合は不動産を放棄することも選択肢として考えられます。

結局のところ、空き家を放置するメリットはほとんどなく、早めの適切な対応が必要です。

まとめ

空き家を放置すると、行政から強制的に撤去される可能性があり、その際の費用は所有者が負担することになります。

このような状況を避けるため、空き家を相続したら、そのままにせずに適切に対処することが重要です。

具体的には、放棄する、リフォームして賃貸に出す、または定期的に状態をチェックするなどの方法があります。

放置された空き家の管理を怠ると、最終的には財産が差し押さえられるリスクもあるため、注意が必要です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次