任意売却
任意売却とは
任意売却とは、債権者(住宅ローンを借りている金融機関)の許可を得た上で、ある程度所有者の希望条件で一般市場にて不動産を売却することです。
本来、売却資金で住宅ローンの残債が完済できない場合は、売却を完了させることができません。売却資金で完済できない状態で不動産を売却するには、完済するために必要な不足分の資金を別途準備する必要があります。
なぜなら、不動産を売却する場合、住宅ローンなどを借りたときに不動産に設定された金融機関の抵当権を抹消しなければ引渡しができず、抵当権を抹消するためには住宅ローンの完済が条件となっているためです。
しかし、任意売却の場合は、売却によって住宅ローンを完済できない場合でも、債権者である金融機関の了承が得られれば、一定の条件のもと抵当権を解除してもらうことができます。
任意売却を行うにはまず、債権者(金融機関)への相談が必要です。その後、売却する不動産の査定を不動産会社に依頼し、査定額を踏まえて金融機関とも連携を取りながら売却活動に入ります。
①債権者である金融機関に任意売却について相談する
②任意売却を扱う不動産会社に所有する不動産の査定額を出してもらう
③債権者へ査定額とともに任意売却の希望を伝えて金融機関の了承を得る
ここまで整って初めて、任意売却の活動を始めることができます。
任意売却のメリット
前述の通り、任意売却の場合、ローンの完済が難しくとも債権者の了承があれば、抵当権の抹消ができる可能性があります。これは任意売却の特徴の1つですが、他にはどのようなメリットがあるのでしょうか?任意売却のメリットについて見ていきましょう。
1.市場価格に近い価格で売却することができる
住宅ローンの返済が滞り、最悪、競売にかけられた場合、不動産の売却価格は市場価格の約50〜70%になると言われています。それに対し、任意売却でうまくいけば、市場価格で売却でき、条件が多少悪い場合でも市場価格の約80〜90%の価格で売却できる可能性があります。そのため、売却資金でのローン完済がしやすいと言えるでしょう。
2.所有者の情報を非公開にできる
任意売却は、通常の不動産売却で売り出すのと同様に、物件所有者の情報が周囲に流れてしまうことはありません。
一方、競売の場合は、競売が決定すると裁判所の競売情報のWebサイト内に、対象の不動産の所在地や権利関係、物件写真などが公表されます。つまり、インターネットでこのような情報が公表されることで、その不動産や所有者を知る人たちに、競売となっている事実を知られてしまう恐れがあります。競売の事実を知られれば、所有者が経済的な苦境にあることも分かってしまいます。
3.引越し費用の負担を軽減できる可能性がある
任意売却では、引越し代を売却資金から捻出できる場合があります。なぜなら、任意売却では、売却資金の配分を債権者と一部相談して決めることができるからです。債権者との交渉次第では、引越し費用など諸費用の一部を売却資金から負担してもらえる可能性もあります。
4.引越し日の希望を相談できる
任意売却では、債権者が認める任意売却の条件の範囲内であれば、契約条件や引渡し日などについて買主と相談することが可能です。つまり、所有者の仕事や学校などのスケジュールを考慮して、引渡し日を決めることができます。
任意売却の注意点
任意売却には注意点もあります。注意点を知らずに任意売却を選択すると、任意売却そのものが完了できなかったり、売却後も住宅ローンの返済で生活に支障が出たりといったトラブルが起こり得ます。そのようなことにならない等、注意点を確認しておきましょう!
1.できる限り早く売却活動を始める
金融機関に相談のうえ許可を得て、任意売却を行うと決定したら、できるだけ速やかに売却活動を始めましょう。
任意売却すれば、ローンの残債が必ずゼロになるというわけではありません。任意売却で得た資金は、優先的にローン残債の返済に充てられます。残債よりも売却で得た資金が少なければ、原則残ったローンの残債分は引き続き返済することになります。
もちろん不動産が高く売却できればよいのですが、希望通りの価格で売却できるとは限りません。そこで、任意売却をできるだけ早く開始することで、売却活動の時間を十分に取り、希望に近い価格で売却できるようにすることがポイントとなるわけです。
とはいえ、残債を気にし過ぎて売り出し価格を高く設定すると、かえって売却に時間がかかったり売れなくなったりすることもあります。また、任意売却の価格設定については、金融機関と相談することになるので、高過ぎるあるいは安過ぎる場合は金融機関が認めないこともあります。いずれにしても売却を長引かせないためには、相場を参考に適切な価格を設定することが大切です。
滞納している間は遅延損害金という利息以外の負担も増えていくため、早く売却することでこのような負担を減らすことにもつながりますよ。
2.任意売却物件の実績の多い業者を選ぶ
任意売却を行う際には、任意売却物件を扱った実績の多い不動産会社を選ぶことも大切です。任意売却は通常の不動産取引よりも、関係する法律の知識や経験がさらに必要となります。また、金融機関との交渉もあるため、任意売却について詳しい不動産会社に手続きを依頼すると安心です。以下の点を確認して慎重に不動産会社を選びましょう。
・弁護士や司法書士など法律の専門家と連携している
・任意売却に関する経験や実績が豊富
3.信用情報に登録されるリスクがある
任意売却に限った注意点ではありませんが、住宅ローンを滞納すると、信用情報機関の個人信用情報に滞納履歴が遅延情報として登録されるリスクがあります。信用情報機関へ遅延情報として登録されるのは、信用情報機関によって異なりますが、一般的に住宅ローンの返済などを3回以上滞納した時点といわれます。
つまり、信用情報機関の個人信用情報の欄に遅延の記載が載ることで、今後、金融機関との取引が難しくなるということです。
遅延情報が信用情報機関の個人信用情報に登録されると、登録された情報の内容によっては5年間にわたり金融機関からの借り入れやクレジットカードなどの審査に通らず、融資やカードの発行が受けられなくなってしまうこともあります。後の生活にも影響を与える恐れがあるため、滞納にはくれぐれも注意しましょう。
4.任意売却には期限がある
債権者である金融機関が任意売却を許可した場合であっても、いつまでも任意売却できるものではありません。任意売却となる状況では、金融機関としても貸した資金の回収を急いでいます。そのため、任意売却を認めてはいるものの、並行して競売の申し立てを行うことも珍しくありません。任意売却を行っていてもなかなか買い手が見つからず、時間が過ぎると、最終的には競売による売却となってしまいます。
任意売却ができる期間は、多くの債権者が競売の「入札開始日の前日」までとしています。この期日までに決済・引渡しを終えていなければなりません。そういった意味でも、任意売却で売却する場合は、媒介を依頼する不動産会社選びや売り出し価格の設定などするべきことをできるだけ早めに行い、早期に売却できるようにすることが大切です。
早めにご相談ください!
ここまで、住宅ローンを滞納してしまう前に知っておきたい任意売却に関する基礎知識について解説してきました。
住宅ローンを支払うことができなくなり、最悪、マイホームを競売にかけられてしまうと、売却金額や引渡しの時期、諸経費など所有者である自分の希望はほぼ通らなくなります。また、競売では売却金額が一般的な売却に比べて低くなる傾向があるため、基本的に売却資金が手元に残ることがありません。売却資金からその後の生活費を出してもらうこともできず、売却後の生活が困窮してしまう恐れもあるのです。
「住宅ローンの返済が厳しい.」と感じ始めたら、まずは金融機関に相談してみてください。返済計画を見直してもらっても返済が難しいときには、できるだけ早めに任意売却について相談することをおすすめします。一般的な不動産売却に近い価格で売却できる任意売却を成功させることで、住宅ローンの残債を完済できたり、その後の生活費を確保できたりする可能性があるからです。
ローンの返済が苦しいと感じたら、経済的にも精神的にもなるべく負担がかからないよう、正しい知識を持って早めに対処しましょう!