1.解体費用の相場
まず最初に、解体費用の相場について解説します。
1-1.建物解体工事
建物の解体工事費用は、主に構造によって決まります。
構造別の建物解体費用の相場は以下の通りです。
構造 | 物量 | 解体費用 | 坪単価 |
---|---|---|---|
木造(W) | 30坪~35坪 | 120万円~175万円程度 | 4~5万円程度 |
鉄骨造(S) | 30坪~35坪 | 180万円~245万円程度 | 6~7万円程度 |
鉄筋コンクリート造(RC) | 30坪~35坪 | 210万円~280万円程度 | 7~8万円程度 |
木造の戸建て住宅は延床面積が30坪~35坪程度が一般的なので、取壊し費用の総額は150万円前後となることが一般的です。
ただし、解体工事の費用は、工事現場の条件によって大きく変わります。
例えば、以下のような状況では費用が上がる可能性があります:
- 敷地内に重機を入れられず、ほとんど手作業で解体しなければならない場合
- 前面道路が狭く、トラックが横付けできない場合
- 近隣の家との距離が近く、騒音防止のために手作業が増える場合
- スクールゾーンが近く、安全管理のためにガードマンを多く配置する必要がある場合
- 道路と敷地の高低差が大きい場合
逆に、周囲に障害物がなく、アクセスが良好な場合は費用が抑えられる傾向にあります。解体工事の正確な見積もりを知るには、現地の状況を直接確認してもらうことが大切です。そのため、見積もりを依頼する際は、解体業者に現地調査をしてもらうようにしましょう。また、家財道具などの残存物が多いと、それを処分する費用も加算されるため、全体の費用が増えることを覚えておきましょう。
例えば、以下の条件によってもかかる費用は異なります。実際には現地で確認してもらい、見積もりを取るようにしましょう。
条件 | 概要 |
前面道路の幅員 | 大きいトラックが通行できない場合は、小さいトラックを使用することになり、廃棄物を運搬する回数が増える。結果として人件費がかさむため割高になる。 |
道路と敷地の高低差 | 高低差があり重機が使えない場合は、人の手で解体することになり、その分人件費が余計にかかる。 |
残存物が多い | 家財道具が多く残っている場合は、廃棄物の処分費が高くなる。手間がかかる場合は人件費も増える。 |
アスベストが使用されている | 人体に有害なアスベストは解体時に特別な処理が必要。近隣への配慮も必要になるため、アスベスト除去費用が別途発生する。 |
依頼する時期 | 大きなイベントと時期が重なると、人手不足が要因となって解体費用も高騰する。一般的に繁忙期とされる3月は仕事が集中しやすいため、割高になる可能性がある。 |
1-2.残置物撤去費用
解体する家に家具や家庭ゴミ等の残置物がある場合は、残置物撤去費用がかかります。
残置物撤去費用は、物量によってかなり金額が異なりますが、15万円~25万円程度となるケースが多いです。
地下埋設物の種類 | 物量 | 撤去費用 | 平均単価 |
---|---|---|---|
残置物撤去費用 | 4t~20t | 15万円~25万円程度 | 3万円/t前後 |
家具や家庭ゴミ等の残置物は、解体で生じる産業廃棄物ではなく一般廃棄物に該当します。
多くの解体工事会社は、一般廃棄物収集運搬業の免許を保有していないため、残置物が残っていると解体を引き受けてくれないことも多いです。
したがって、残置物については解体工事前に自分で捨てることが原則となります。
1-3.樹木伐採処分費用
庭の樹木を撤去する場合、樹木伐採処分費用もかかります。
樹木は4トントラック2台分(計8トン)程度で処分できるケースが一般的です。
金額としては15万円~20万円程度となります。
地下埋設物の種類 | 物量 | 撤去費用 | 平均単価 |
---|---|---|---|
樹木伐採処分費用 | 8t前後 | 15万円~20万円程度 | 2万円/t前後 |
1-4.地下埋設物撤去費用
建物の解体では、見積もり時には発見できなかった地下埋設物が発見された場合、地下埋設物撤去の追加工事費用が生じることがあります。
一般的な戸建ての広さの土地において、地下埋設物がある場合の追加工事費用の相場は以下のような金額感です。
地下埋設物の種類 | 物量 | 撤去費用 | 平均単価 |
---|---|---|---|
コンクリートガラ | 10t~20t | 20万円~30万円程度 | 2万円/t前後 |
浄化槽※ | 4t~8t | 10万円~20万円程度 | 3万円/t前後 |
過去の建物の基礎 | 12t~32t | 20万円~30万円程度 | 2万円/t前後 |
浄化槽:公共下水道が整備される前に建物が建っていたケースでは、地下に浄化槽が残っていることがあります。
仙台市の解体費用相場
仙台市の解体費用相場を市区町村ごとに坪数別、構造別の坪単価という形で過去クラッソーネで提出された見積書総額の平均相場を基に記載しています。
地域によって価格に差があるため、同一エリアの相場と比較することが大切です。
延床面積 | 木造 | 鉄骨 | 鉄筋コンクリート | その他 |
---|---|---|---|---|
10坪未満 | 5.7万円 / 坪 | 6.2万円 / 坪 | -万円 / 坪 | 5.8万円 / 坪 |
10坪台 | 5.8万円 / 坪 | 4.0万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 |
20坪台 | 5.9万円 / 坪 | 4.2万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 |
30坪台 | 5.5万円 / 坪 | 6.4万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 |
40坪台 | 5.2万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 |
50坪台 | 4.6万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 |
60坪台 | 4.5万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 |
70坪以上 | 4.9万円 / 坪 | 5.9万円 / 坪 | -万円 / 坪 | -万円 / 坪 |
時系列別の坪単価の推移
年 | 坪単価 |
---|---|
2020 | 5.5万円 |
2021 | 5.6万円 |
2022 | 5.3万円 |
解体費用は「建物本体の解体費用+廃材処分費+諸経費」の3つの費用で構成されます。リサイクルコストの高まりの影響で、近年は廃材処分費が増加傾向です。
仙台市特定空家等除却促進補助事業について
安全で安心に暮らすことのできる地域の実現を目指して、倒壊等のおそれのある危険な空家等を除却し、更地にする際に要する工事費の一部を仙台市が補助しています。
仙台市特定空家等除却促進補助事業チラシ(PDF:501KB)
対象となる空家等
- 仙台市内に存していること。
- 所有者が法人でないこと。
- 特定空家等に該当する状態(下記の状態)として本市が判定していること。
- 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
- 「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づく命令が実施されていないこと。
- 所有権以外の権利の設定がされていないこと、又はその他権利を有する者の全員から除却について同意を得ていること。
補助申請ができる方
「対象となる空家等」の要件を満たす空家等の所有者(法定相続人、法定代理人を含む)又は、所有者等の同意を得た方(いずれも下記要件を満たす方)
- 法人でないこと。
- 空家等が共有である場合又は所有権以外の権利の設定がある場合、当該共有者又はその他権利を有する者の全員から除却について同意を得ていること。
- 市税の滞納・未納者や暴力団員・暴力団関係者でないこと。
- 周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう所有する建築物及びその敷地の適切な管理の意向を示していること。
対象となる経費・補助額
- 特定空家等(建築物及びこれに附属する工作物、門扉及び塀)を除却し、更地にする工事に要する経費
- 対象経費の3分の1(上限50万円)
土地売却で建物を解体する場合としない場合の売却価格の違い
土地売却において建物の解体は、売却価格にどのような影響があるのでしょうか。
例えば、解体費用が150万円かかっているとしても、150万円高く売却できるわけではありません。更地の方が新築時のイメージがしやすく、解体費用がかからないため買主にとっては買いやすい物件になります。
解体あり(更地にして売却) | 解体なし(古家付きで売却) | |
査定価格 | 土地の査定価格が大きく変動するケースは少ない | 解体費用がかかるため、土地の査定価格よりも価格は安めに設定される |
売りやすさ | 解体費用がかからないため買主が購入しやすい | 解体費用が別途かかるため、買主の負担となる可能性がある |
次の項目では、建物を解体してから土地を売却するメリットとデメリットを解説していきます。
建物を解体してから土地を売却するメリット
建物を解体してから土地を売却する最大のメリットは早期売却が望めることです。同じような条件であれば解体費用がかからず、すぐに建築できる更地の方が先に売れる傾向にあります。
これに加えて、代表的な以下3つのメリットを紹介します。
- 買主とのトラブルを未然に防ぐことができる
- 解体費用を経費にできる
- 買主が土地の形状や広さをイメージしやすい
買主とのトラブルを未然に防ぐことができる
不動産取引におけるトラブルの多くは、物件もしくは契約内容に起因するものです。
引渡し後に不具合(瑕疵)が見つかった場合は、程度にもよりますが売主は契約不適合責任を問われて、損害賠償や契約解除となることがあります。
瑕疵とは、例えば雨漏りやシロアリの被害などです。土地自体の瑕疵が原因になることは少なく、トラブルの多くは建物の瑕疵です。
トラブルが起きる可能性がある建物を解体してから売却することは、買主とのトラブルを未然に防ぐことにつながります。
解体費用を経費にできる
不動産などの資産を売却して利益が発生した場合は、所得に対して譲渡所得税がかかります。
課税対象となる譲渡所得税額は、以下の計算式で求めます。土地を売却するときに発生した解体費用は、譲渡費用として課税譲渡所得から差引けるので、利益が圧縮され節税効果が見込める場合があります。
収入金額 – ( 取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
※参考1:No.3252 取得費となるもの|国税庁
※参考2:No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁
他に譲渡費用として認められる経費と、認められない費用には以下のようなものが挙げられます。
譲渡費用として認められる経費 | 譲渡費用として認められない費用 |
土地や建物を売却するために支払った仲介手数料 | 土地・建物の固定資産税 |
売買契約時に支払った印紙税(印紙代) | 建物の修繕費 |
借家人に明け渡しを求めるために支払った立退料 | 土地建物の維持・管理にかかった費用 |
※参考1:譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
※参考2:譲渡費用となるもの|国税庁
買主が土地の形状や広さをイメージしやすい
建物がある状態では、土地の形状や広さをイメージすることは困難ですが、更地にすることによって新たな建物の新築時をイメージしやすいメリットがあります。
また、隣地における建物の配置や窓の位置を確認できることは、建物のプランを検討する際にも役立つでしょう。
建物を解体してから土地を売却するデメリット
建物を解体して更地にしてから土地を売却するメリットがある一方で、以下のようなデメリットがあります。
- 固定資産税が高額になる
- 解体費用をローンで賄うと金利が高くなる
ここでは、上記2点のデメリットを解説していきます。
固定資産税が高額になる
建物を解体してしまうと、住宅用地ではなくなります。住宅用地には課税基準の特例措置があり、固定資産税と都市計画税の課税標準額がそれぞれ以下の通り軽減されています。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | |
小規模住宅用地 | 住宅用地で200㎡までの部分 | 課税標準額×1/6 | 課税標準額×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の住宅用地 | 課税標準額×1/3 | 課税標準額×2/3 |
住宅用地において200㎡以下であれば、固定資産税は課税標準額が1/6になります。建物を解体してしまうと特例措置が受けられず、翌年の固定資産税と都市計画税が高額になるので注意が必要です。
なお、固定資産税及び都市計画税の課税額は以下の通りです。
固定資産税額=課税標準額×税率(1.4%)
都市計画税の税額=課税標準額×税率(0.3%)
解体費用をローンで賄うと金利が高くなる
建物の解体費用をローンで賄うと、金利が高くなる傾向にあります。
空き家の解体には、「空き家解体ローン」が利用できます。近年、空き家が増加傾向にあることが問題視されていますが、このローンは空き家の増加を抑制するために政府から金融機関に要請したものです。
利用目的が問われないフリーローンに比べると金利は低めに設定されていますが、住宅ローンと比べると金利は高めです。空き家解体ローンは、金融機関によって条件が異なります。詳しくは、各金融機関に問合せましょう。
土地売却で建物を解体したほうが良いケース
ここでは、土地売却で建物を解体したほうが良いと考えられるケースの特徴を3つ紹介します。
- 土地を早く売却したい場合
- 買主とのトラブルをなるべく避けたい場合
- 経済的な価値がない建物を所有している場合
土地を早く売却したい人
建物を解体してから売却するほうが、早期に売却しやすくなるでしょう。
建物を解体する費用が発生しないため、買い手側にとっては資金計画が立てやすいことがメリットになります。また、更地の状態のほうが新築時のイメージがしやすく、早期に購入を決断しやすくなります。
買主とのトラブルをなるべく避けたい人
更地で売却する場合、契約不適合責任を問われる可能性が低くなります。なぜなら、不動産取引におけるトラブルの多くは、引渡し後の建物の瑕疵が原因となるケースが多いからです。
建物の築年数が極端に古かったり、資産価値が低かったりした場合に、買主とのトラブルを極力避けたい人は、更地にしてから売却することをおすすめします。
経済的価値がない建物を所有している人
建物に経済的な価値がある場合は、建物の評価額を上乗せして中古住宅として売出すことが可能です。
しかし、築年数が古く資産価値がない場合は解体する費用が余分にかかるため、マイナス要因になってしまいます。解体費用を捻出できる場合は、建物の解体を視野に入れましょう。