相続した借地権のある空き家を解体するかどうかの対策について解説

借地権

土地が他人の所有で、実家の建物が自分の名義というケースです。
借地権がついている土地に建てられた家=借地建物に暮らしている人は多くいます。

普段、借地であることを意識することはあまりないと思いますが、空き家が増えている昨今、
様々な問題が起きています。
今回は、借地建物を相続された方からのご相談になります。

目次

地主と交渉し借地権を売却したケース

相談者様のお悩み内容

宮城県にお住まいの50代の男性からのご相談でした。
借地に建っている実家を相続されましたが、木造の建物で築年数が60年以上と古くて住む予定
も無く仕事で忙しいこともあり管理もできないとのことでした。

そこで地主さんに借地を返したいと相談したところ、地主さんからは古家を解体して更地にし
た上で返して欲しいと言われたそうです。

10年近く空き家状態が続いていたため、庭木は大きく成長し敷地内がよく見えない状態でした。
実家はツタに覆われてしまっており、小型家電や古タイヤなどの不法投棄もありました。
電気、水道は修理をしないと使えない状態となっていました。

空き家のままにしておくことによる様々なリスクも多く、そのままにしておくのは危険という
ような状況でもありました。
建物の中に入るにも気が引けるくらい汚い状態で、とても自分ひとりでは手に負えないと感じ
た相談者様はホームページで当社を見つけて相談していただきました。
空き家専門の不動産会社で解体まで依頼できるという点に魅力を感じていただいたようでした。

解体のお見積りをして欲しい、そして解体するまでの管理もお願いできないかと当社にご相談
いただきました。


ただ、実際のところご予算はあまりお持ちでなく、なるべく金額的な負担は少なくできないか
というご要望がございました。
そして、借地に関する契約書を地主さんと結んでいないということがわかりました。
解体に関するご相談をいただいたのですが、経緯や状況を詳しくお伺いする中で、5つの方法
をご提案
させていただきました。

借地権は売ることができる

①地主さんに「建物・借地権」を買い取ってもらう
②第三者に「建物・借地権」を買い取ってもらう
③自身で地主さんから「土地」を買い取る
④賃貸物件にする
⑤更地にして返還する

優先順位として、地主に「土地」を買い取ってもらうことを最優先にして、だめなら第三者に
買い取ってもらうことを考えるよう提案させていただきました。

本件の地主さんは解体を要求していますが、本来地主は、借地権設定契約が満了した段階で、
借地人側から、建物買取請求権を行使されると、建物を時価で強制的に買い取らなくてはなり
ません。
その点を踏まえると、解体費用を地主側で負担してもらうことも交渉次第ではできるかもしれ
ません。

一方、売却を考え、第三者に売却するとなると、借地権の譲渡には賃貸人である地主の許可が
要ります。
地主が反対したら、そもそも第三者へ借地権を譲渡することができません(民法612条参照)。
そのため、借地権の譲渡先(売却先)は地主を最優先に検討すべきです。
地主の状況によっては、底地権と借地権を一括で売却することの提案もできます。

借地は権利であり売却が可能であるとのことをお伝えし、地主さんとの交渉をお手伝いさせて
いただくことになりました。
①の地主さんに「建物・借地権」を買い取ってもらうことに関しては、地主さんが買い取る予
算も解体して何か活用する考えもなかったことから、難しかったです。
なので、②の第三者に「建物・借地権」を買い取ってもらう可能性を探ることになりました。

借地契約は契約書が無かったため、改めて地主さんと借地契約を締結し、その中には借地期間
、借地料、更新料、建替承諾料、名義変更料などを明記しました。

契約内容が明確になった上で借地の売却活動を開始させ、半年もせずに個人の不動産投資家が
アパート建築のために購入することになりました。
購入者さんにより空き家は無事解体され、アパート建築が始まりました。


相談者さんは解体費用など負担することなく、むしろ売却代金を手に入れることができました。
地主さんとしても今後も借地料が継続して入金されることからもとても喜ばれました。

借地権が売れるとは知らなかった

相談者様からのお声を紹介させていただきます。
ご両親が地主さんから土地を借りて実家を建てていたため、てっきり土地を返す時は建物を解
体して返さないといけないと思っていました。


そして、解体工事の費用をいかに安くできないかと複数の専門業者に見積もりを取りました。
ホワイトハウスさんに相談したことで、借地権は売却できる、さらに解体は買主の方でしてく
れると聞いたときは驚きました。


地主さんとの条件交渉もお力になってくれたので助かりました。
そして買主さんも予想よりも早く見つけてくださって感謝しています。
何から何までありがとうございました。

老朽化・朽廃した借地権

よく、親の代からの借地権の空き家が老朽化したがどうしたらいいか、という相談があります。
その家を親の世代から使用していたという事もあり、すでに老朽化していることが多く、人が
住んでいない状態だと、老朽化の進行は早くなります。

そのまま放置していると、躯体部分が腐ってしまって、朽廃状態となってしまいます。
朽廃してしまうと、借地権設定者つまり地主さんから借地権の存否を問われてしまいます。
その場合でも、借地権者(借主)と借地権設定者(地主)とで協議・交渉していくのですが、
最悪のケースだと借地契約の解除につながる場合もあり得ます。

また、「空き家対策特別措置法」の特定空き家に認定されてしまうと、借地権者つまり建物の
所有者宛てに通知が来ます。

この通知を行っても改善が見られない場合には、行政で強制的に撤去されてしまう可能性があ
り、解体費用は建物の所有者あてに請求されてしまうので要注意です。

借地権上の建物を解体することはできる?

そもそも借地権とは

借地権について理解するには、借地権と地上権の違いについて押さえておくことが大切です。
まず、借地権とは土地の上に建物を建てることができる権利のことです。

一方、地上権は借りた土地の上に建物を建てられるだけでなく、建物のリフォームや建物の売
買など、その土地を好きにしてよい権利で、所有権を持っているのと同様に利用することが可
能です。

地上権の設置は地主の承諾が必要で、上記のような強力な権利を与える地上権の設定に同意す
ることはほとんどありません。
このため、一般的に借地といえば前者の借地権(賃借権)のことを指すと考えるとよいでしょう。
借地権の場合、地上権とは異なり、建物の解体やリフォーム、売買などの際に地主の許可を得
る必要があります。

新借地借家法か旧借地借家法かを確認

種  類特 徴
借地権(旧法)
普通借地権(新法)
契約期間はあるものの、更新を繰り返すことでずっと借りていられる。
定期借地権(新法)契約期間が満了したら、更新することなく土地は地主に返還される。
新法によるもの。
事業用定期借地権等(新法)事業用に限定され、アパートやマンションであっても居住のための建物は建築できない。
新法によるもの。
建物譲渡特約付借地権(新法)用途の制限はなく、契約期間満了後は地主が建物を買い取って借地権を消滅させる。
新法によるもの。
一時使用目的の借地権(新法)工事現場の仮設事務所などのように、その土地を借りるのが一時的であることが明らかなもの。

借地権に関しては、新借地借家法に基づくものなのか、旧借地借家法に基づくものなのかを確
認しておくことが大切です。

旧借地借家法では、借主側の権利が強く認められていることから、平成4年に改正されてできた
のが新借地借家法で、大きく異なることとして、定期借地権が認められたことが挙げられます。

一般借地権だと、借地権を設定した後の存続期間は新規で30年間、更新すると20年とされてお
り、更新の際に地主の側から更新を拒絶するには正当事由が求められます。

一方、定期借地権であれば最初に定めた期間を経過した後は、更新がなされません。
一般定期借地権だと借主の権利が強く保護されていることから、「一度貸したら半永久的に返っ
てこない」という状態になりかねないところから、定期借地権の登場により、一定期間経過後
は必ず土地を取り返すことができるようになったため、地主側からすると借地をしやすくなっ
たといえるでしょう。

借地権が旧借地借家法なのか、新借地借家法なのかについては、まずは平成4年8月以降に契約
されているかどうかを確認しましょう。
平成4年7月以前であれば旧借地借家法、8月以降であれば新借地借家法に基づいて締結された
ものと判断できます。
ただし、旧借地借家法で契約されたものを更新する際には、新借地借家法へ変更することが強
制されているわけではないため、引き続き旧借地借家法で契約されているケースもあります。

借地権の種類 借地権
(旧法)
堅固建物
借地権
(旧法)
非堅固建物
普通借地権定期借地権
期間の定め有り無し有り無し有り無し
存続期間30年以上60年20年以上30年30年以上30年50年以上
更新後の存続期間30年以上30年20年以上20年20年以上
(2回目の更新から10年)
 更新無し
期間満了後に更地返還

借地権上の建物を解体することは可能

さて、借地権上の建物を解体できるかどうか、ですが基本的には可能です。
ただし、先述したとおり借地上の建物を解体する際には地主の承諾を得なければなりません。
まずはこの点を押さえておきましょう。

建物を解体すると借地権は消滅する?

借地権は土地の上に建物を建てられる権利ですが、その目的となる建物を解体したとき、借地権は
消滅してしまうのでしょうか。
この点、原則として建物を解体しても借地権が消滅することはありません。
これは旧借地借家法の場合でも、新借地借家法の場合でも同様です。

ただし、新借地借家法の場合、新規の借地権存続期間である30年を経過した後、更新手続きを経た
後は、地主による借地権の解約が認められています。
具体的には、借地権の更新後に建物を解体し、借地人が地主の承諾を得ずに建物を再築した場合に
借地権を解約できると定められているのです。

また、新借地借家法の場合でも、旧借地借家法の場合でも、借地契約の更新のタイミングで借地上
に建物が建っていない場合には、契約を更新することができず、解除となってしまう点に注意しなけ
ればなりません。

この場合、建物の変わりに新たに建物を建てる旨を書いた立て看板を立てれば更新できるとされてい
ます。

解体費用は原則借主負担

借地上の建物の解体費用は、原則として借主が負担しなければなりません。
ただし、交渉次第では地主が負担してくれることも考えられます。
というのも、地主としても借地上の建物を解体して返還して貰えれば、所有権として土地を自由に活
用できるようになるからです。
借地上の建物を解体するときには、費用負担など含めて、地主と話し合いながら進めていくことが大
切だといえます。

解体費用の相場について

借地上の建物を解体しなければならなくなった場合、その費用はどれくらいになるのでしょうか?
坪数や、木造か鉄筋か等によって相場は変わってきます。
木造住宅であれば、3,4万円程度/1坪ですが、鉄筋コンクリートになると、倍程度になってきます。
頑丈な建物ほど取り壊す手間が多くなるからです。

木造:3~4万円/坪
鉄骨造:4~6万円/坪
RC造:5~8万円/坪


例えば、30坪の木造住宅であれば90~120万円程度、鉄骨造住宅であれば120~180万円程度、RC
造住宅であれば150~240万円程度です。
ただし、上記はあくまでも建物本体の解体費用相場です。
カーポートやブロック塀など外構も解体する必要がある場合や、アスベストの除去が必要なケースな
ど、別途費用が必要になります。

また解体する家の場所によっても価格は変動します。
へんぴな場所や重機が入りにくい場所などであれば、費用はかさんでしまいます。
解体は業者に依頼することになると思いますが、その際は数社話を聞いて、比較検討して決めるとよ
いでしょう。

相続において借地上の建物を放棄することはできる?

借地上の建物について、ご両親から相続することは少なくありません。
しかし、借地上の建物を活用しないのであれば、単に地代だけ払い続けなければならないものとなっ
てしまいます。
借地権自体、所有権と比べて売却しやすいのが一般的で、活用の見込みもないというケースでは放棄
したほうがよいと考えるようなケースもあるはずです。
こうしたケースで、借地権上の建物を放棄することは可能なのでしょうか?

相続放棄することは可能

借地権上の建物を相続するケースでは、相続放棄することは可能です。
相続放棄とは、被相続人が亡くなったときに、相続財産の全てを相続しないという手続きを取ること
です。
相続放棄するためには、被相続人が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内にその手続きをしなけ
ればなりません。
なお、相続放棄はこのタイミングでしか手続きすることができません。

一旦相続した後、やはり放棄したいとなっても、資産を放棄するシステムは他にないのです。

その他の財産もすべて相続できない点に注意

相続放棄すれば、借地権上の建物の相続を放棄することは可能です。
しかし、相続放棄すると、被相続人(亡くなった方)から相続できる他の資産も全て放棄しなければな
りません。

特にプラスの財産が多いケースでは、慎重に判断することが大切だといえます。

まとめ

相続した借地権のある空き家を解体するかどうかについて具体的な相談例を挙げて解説しました。
借地権を返したくても地主さんから建物を解体してと言われてしまい、困っていた相談者さんは、
我々不動産会社に相談して地主さんとの交渉を任せていただいたことで関係者が皆納得して喜んで
いただける結果に導くことができました。
相続した物件をどうしたらいいか悩んでいる方はお気軽にホワイトハウスまでご相談ください。
様々な選択肢の中からメリット、デメリットを細かく丁寧にご説明して差し上げます。

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