持ち家を所有している方の中には、ファミリー向け等に賃貸している方が一定数いらっしゃいます。
「転勤のため今住んでいるマンションに住まなくなる」
「親と同居するので今住んでいるマンションが空く」
などのライフスタイルの変化によって、誰も使わなくなった自宅を第三者に貸しているなんてことは
少なくありません。
今回は、もともと自宅として使っていた家を長年賃貸していて、入居者が突然退去してしまったケー
スについて解説します。
長年の入居者が突然退去してしまい、大規模修繕が必要に…
相談者様のお悩み内容
宮城県にお住まいの60代男性からのご相談でした。
相談者様は20代後半で一家が住むためのマイホームを購入し数年は快適に生活をしていたのですが、
当時お勤めになられていた会社は全国転勤がある大企業ということであるとき遠方への転勤に伴って
、空き家となった自宅を賃貸することにしました。
築年数が浅く、間取りも4LDKで駐車場はもちろん庭付きと申し分ない大きさで、すぐ借主は見つか
り、小さい子どもが生まれたばかりのご家族が入居されました。
結果的に20年以上同じご家族が住まわれていたのですが、お子様の独立などもあり小さな家に引っ越
されるということで住んでいた方が退去されました。
また新たに入居者を募集して賃貸するには大規模な修繕が必要とするような状態となっていました。
しかし相談者様にはまとまったお金がなく、簡単には大規模修繕が実施できない状況でした。
再生するには大規模なリフォームが必要だった
空き家は20年以上、同じ家族に貸していたため、大規模な修繕がされていませんでした。
築年数も約30年経過していました。
そのため、再び賃貸住宅として利用するには外壁や水回りを含めた大規模な修繕が必要な状態でした。
大規模修繕のざっくりとした見積もりを取ると500万円以上は必要であることが判明しました。
柱などの主要な構造部分に木材を使う木造住宅で、積年の雨漏りで水分が染み込み続けることで構造
上重要な木材が腐食してしまっている部分もありました。
また、湿っていて暖かい場所を好むシロアリは木材を食い荒らすため、雨漏りが影響してシロアリの
食害の原因となっていることも分かりました。
外壁などの内側に入っている断熱材が正しく施工されていないと、雨漏りなどで湿ったままになって
しまい、断熱性能が落ちるだけでなく、断熱材に接触する柱などが腐食したり、カビが大量発生して
住む人の健康を害したりするリスクもあるとのことでした。
大規模修繕、建て替えと売却を検討
リフォーム費用が多額になることと、木造で築30年になることから相談者様自身による大規模修繕は
断念することになりました。
他の選択肢を検討した際に、思い切って建物を解体してしまって新築する建て替えと現況のまま売却
するという2つの選択肢がありました。
選択肢1つ目の空き家を新築戸建住宅に建て替えた場合は、1,500万円〜2,000万円程度が必要とな
るため、投資した金額を回収するには甘く見積もっても10年以上は掛かることが想定されます。
また、毎年の固定資産税のほかにも定期的な修繕によるメンテナンス等にも負担が掛かってきます。
入居者を募集して、もしすぐに退去してしまった場合は改めて費用をかけて入居者を募集する必要が
出てきます。
家賃相場は昔よりも高くなっているので建て替えして、入居者を再募集することで相応の家賃収入も
見込めましたが、やはり初期投資の大きさと借入をしなければ実現できないということでそこまでの
投資はできないという結論になりました。
結果的に、現況のまま古家付土地として売却することになりました。
売却開始から3ヶ月以内にお問い合わせがあり、相談者様の納得のいく金額で売買が成立しました。
比較検討できたので決心がついた
相談者様の声です。
相談した時は、できれば売却せずに残しておきたいという気持ちが当初は強かったです。
どうしていったら良いのかと不安がある中で、リフォーム、建て替え、売却の3つをご提案いただき
ました。
それぞれの活用方法を比較検でき、最終的には売却が私にとっては一番良い選択肢だと思えるように
なりました。
今でも売却して良かったと思っています。
様々な提案の中から納得した方法を選んでいただくことができてとても良かったです。
持ち家を売らずに賃貸に出すことのメリットとデメリット
引越しなどで住まなくなった持ち家を売却することなく、「賃貸に出して有効活用する」という方法を
紹介いたします。
賃貸に関するメリットやリスクを理解し、そもそも賃貸が望ましいのか、賃貸をする場合どうしたら
良いのかを判断するために役立てば幸いです。
初期費用を投じて家賃収入を増やす
持ち家を賃貸に出すときには、貸し出す準備のためにハウスクリーニングや工事などの費用がかかりま
す。
その中でも、最低限かけるべき費用と、かけると利益が増えるかも知れない費用というものがあります。
どのくらい初期費用をかけるかによって、生じるリスクとともに得られるリターンも変わってきます。
賃貸管理会社に賃料査定を依頼する際には、かかる費用と賃料の目安を確認し、リスクとリターンのバ
ランスを考えて、納得できる方法を選ぶことが大切です。
現状のままリフォームをせずに少額の初期費用で賃貸に出す
初めての賃貸経営では特に、最初の入居者がみつかるかが不安なものです。
この状況で、高額の初期投資を行う決断はリスクも高く難しいことでしょう。
貸したい実家の状態にもよりますが、リフォームなどを行わずとも、ハウスクリーニングと呼ばれる清
掃をしてもらうだけで貸し出せることは多々あります。
借りる部屋を探している人にとっては、目に付けば少しの汚れでも気になるものです。汚れが目立てば
部屋選びをしている人の心象が悪くなります。
そのため、少額の費用でも集客効果が高い措置として、専門の業者にハウスクリーニングを依頼するこ
とがよく行われます。
水回りなどの落としづらい汚れ、手をかけづらい箇所の汚れもキレイにしてもらい、物件の清潔感を高
めるのです。
賃料査定の結果、そのままの状態で貸し出す場合の家賃に期待が持てない場合には、次に取り上げるリ
フォームを検討し、家賃の引き上げを狙います。
リフォームをして、貸し出しやすい状態に変える
ハウスクリーニングを行うだけでは貸し出しづらい場合や、そのままでは家賃があまり期待できないと
きに、リフォームで解決できることがあります。
壁紙の破れや床の傷が目立つ家は、清潔であっても人気が下がります。
初期費用を投じて壁紙や床材を新しくすることで、内見に訪れた人の印象を良くし、賃料や入居率の改
善につなげます。
短期間の賃貸のために大規模な工事はあまりおすすめできませんが、長期的に賃貸を行う予定であれば、
投じた費用を効果として回収しやすく、資金次第で様々な工事が検討できます。
実家に住んでいた人にとって、慣れてしまえばさほど不便に思われないようなことでも、周辺などの競
合する物件より劣れば、選んでもらうことや十分な賃料を払ってもらうことが難しくなります。
そうした場合に、間取りの変更、設備の追加など、リノベーションと呼ばれるような、より大きな規模
の機能改善の工事を行い、誰からも認められやすい魅力を物件に対して与えていきます。
初期費用も増えるため賃貸のリスクは高くなりますが、うまく行えば収入が大きくなる期待も高くなり
ます。
アパートやマンションに建て替えて賃貸に出す
持ち家が一戸建てで十分な敷地を持っている場合に、一度建物を取り壊し、賃貸用のマンションやアパ
ートとして建て替えることもあります。
一般的には、建て替えによって戸数を増やすことで、そこで住める人数を増やすことができます。
地域性などから賃貸物件の需要が十分にあると見込めるならば、建物全体の価値は高められ、複数室を
貸し出すことによって家賃収入が増える期待は高いでしょう。
また、複数室になることで、空室があっても他の部屋で賃料が得られるというように、リスクが分散さ
れて収入が安定しやすくなるというメリットもあります。
複数室のうち一室に自ら住むなどの選択肢も将来に残すことができ、様々な計画を検討できます。
しかし、必要な費用は大きくリスクが高くなります。
収入を増やすためとは言え、管理する手間が増える点も予め理解しておく必要があるでしょう。
建て替えは、安定的に高額の不労所得を手に入れる大きなチャンスではありますが、他の選択肢と比べ
ても重大な決断となります。
不安がある場合は、先に小規模に賃貸を行い、数年間賃貸経営の経験を積んだ上で慎重に判断すると良
いかも知れません。
実家を空き家にしておくリスク
少子高齢化に伴う人口減少や高齢者の介護施設利用によって、空き家の件数は増加しています。
全国的な空き家問題の広がりを背景として、2015年には空き家問題の解決を目的とした「空き家対策
特別措置法」も施行されています。
この法律によって空き家所有者に罰則を伴うものも含めた何らかの措置が実行される機会も年々増えて
きています。
参考
「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」(国土交通省)
「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(R3.3.31時点)」
短期的な空き家であれば、すぐに困ることはあまりないかも知れません。
しかし、家は空けている期間が長引くほど様々なリスクが重なり、そして大きくなっていきます。
実家を空き家のまま放置することが、どのような深刻なリスクを生み出すのか。
ここでは5つの例を挙げてみます。
建物や設備が老朽化する
家を空き家にして放置しておくことは、老朽化を加速させます。窓やドアが締め切られたままの家は、
室内に湿気がこもり、カビが発生しやすくなります。
また、長期間空き家となっている場合、雨漏りなどが生じても気づけないので、そこから被害が拡大し
ていくリスクもあります。
害虫や動物の棲み処になる
人が住まない家は、人以外の生き物にとって、外敵から身を守ることができ、駆除などの心配もない、
棲みつきやすい環境となります。
掃除がされないので、ダニ、ハエなどの害虫も繁殖しやすく、人気(ひとけ)がないことで、ネズミや
ハクビシンといった害獣の棲み処になることもあります。
放火や不法投棄の対象になる
一戸建て住宅の場合、人が住んでいないと庭に雑草や木が生い茂り、マンションよりも空き家であるこ
とが外部から分かりやすく、放火や不法投棄のターゲットとされやすくなります。
放火は延焼により近隣にも被害を与える恐れがあります。
不法投棄もまた、景観が資産価値に与える影響や、害虫・害獣に棲みやすい環境をつくってしまう可能
性、悪臭の発生など、周辺住民にまで悪影響が及ぶ可能性が考えられます。
所有者が行うべき管理の責任を果たさない状況が続いた場合、実害を及ぼしたときに訴訟を起こされる
リスクはもちろん、これ以前に自治体から危険性があると判断された段階で罰則を科されることもあり
ます。
参考
「既存不適格建築物に係る是正命令制度について」(国土交通省)
「既存不適格建築物に係る是正命令制度に関するガイドライン」
売るなどして空き家を手放さない限り費用は掛かり続ける
空き家を手放さない限り、維持費用がかかります。
実家を相続すれば、所有者としてその分の固定資産税、都市計画税を納めなければならなくなります。
分譲マンションの場合には、建物に共有部があることで、その機能を維持してもらうための管理費や、
建物を直すときのための修繕積立金の支払いが継続的に必要になります。
固定資産税額がそれまでの支払いよりも高くなることがある
前述した通り、2015年に「空家等対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)」が施行
されました。
空き家の中でも管理不十分で「危ない」「汚い」「見た目が悪い」など問題のある家を「特定空家等」
に指定し、自治体が様々な措置を行えるようにする法律です。
措置の一つとして「固定資産税等の特例措置(人の居住の用に供する家屋の敷地に適用される住宅用
地特例)」の解除があります。
特定空家等に指定され、その後の行政からの助言・指導に従わなかった場合に、次のステップとして
勧告がなされ、これにより、元々実家の固定資産税の支払い額を小さくしていた特例措置が解除され
てしまいます。
この特例措置は、固定資産税の支払い額を最大で1/6まで減額するもので、解除されたときには最大で
現在の支払額の6倍まで負担が増えます。
さらにその後も然るべき対応を行わなかった場合には、続く措置として罰金、行政代執行が行われます。
代執行では、行政が代わりに建物の除却など必要な措置を進めますが、その際の解体工事等の費用は所
有者から徴収されることとなります。
参考
「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」(国土交通省)
「空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(平成27年度税制改正)」
まとめ
転勤により所有していた自宅を賃貸で有効活用していたものの、時間が経って大規模修繕が必要になった
ケースを解説しました。
大規模修繕の予算が無く、建物を建て替えするにも相応の投資が必要であることから結果的に、現況のま
ま売却したことで落ち着いた事例でした。
持ち家を売らずに賃貸に出すことにはメリットとデメリットがそれぞれあり、それらを理解した上で適切
な選択肢を選んでいきたいものです。
我々ホワイトハウスは長年の不動産業界経験を活かして、実際に役立つ情報や提案を日々提供させていた
だいております。
所有の不動産をどう活用しよう、売却した方が良いのかな、管理したくても手が行き届かない、などなど
不動産に関するお悩みがございましたらお気軽にご相談ください。