塩竈市の空き家や空き地の実態、管理に関して塩竈市が掲げる計画について解説します。
塩竈市における空家等の現状
塩竈市における空き家の現状や人口の推移などについてまとめました。
「住宅・土地統計調査」による空き家の現状
平成30年に総務省が実施した住宅・土地統計調査(令和元年9月30日公表)によれば、全国の総住宅数は約6,240万戸で、総世帯数は約5,400万世帯です。これにより、住宅の供給量は十分であることが分かります。その中で「空き家」の数は約849万戸、全国の総住宅数の13.6%に相当します。さらに、「賃貸用または売却用の住宅」や「二次的住宅」を除いた「その他の住宅」と分類される空き家は約349万戸で、全体の5.6%を占め、その数は過去20年間で約1.9倍に増加しています。
塩竈市では、総住宅数が23,320戸、そのうち空き家は2,590戸であり、空き家率は11.1%です。「その他の住宅」と分類される空き家は1,280戸で、総住宅数の5.5%を占めていますが、その数は過去15年間で約1.5倍に増加しています。このため、塩竈市でも今後空き家の増加が見込まれます。
「空家等」と「空き家」の違い
- 空家等:法に基づく表記で、「空家等」には建物に附属する工作物およびその敷地が含まれます。ただし、建物の一部のみが使用されていない場合は「空家等」には該当しません。
- 空き家:住宅・土地統計調査に基づく表記で、「賃貸用または売却用の住宅」、「二次的住宅」、および「その他の住宅」を含むすべての空き家を指します。
- 賃貸用または売却用の住宅:新築・中古を問わず、賃貸または売却のために空いている住宅。
- 二次的住宅:別荘や普段住んでいる住宅とは別に、たまに寝泊りするための住宅。
- その他の住宅:上記以外の空き家で、転勤や入院などで長期間不在の住宅や、建て替え予定の住宅。
人口と世帯数の変化
国勢調査によると、塩竈市の総人口は平成7年の63,566人をピークに減少傾向にあります。しかし、65歳以上の高齢者人口は平成7年の15.3%から令和2年には32.6%に増加しています。
総世帯数は平成12年以降減少していましたが、平成27年から増加に転じました。特に、65歳以上の高齢者がいる世帯の中で、単独高齢者世帯は平成12年の15.1%から令和2年には25.3%に、高齢夫婦のみの世帯は平成12年の22.8%から令和2年には25.4%に増加しています。これにより、将来的に入居者の死亡や施設入所による空家等の増加が予想されます。
このように、塩竈市では空き家の数が増加しており、特に高齢化や世帯構成の変化が空き家問題を深刻化させています。これからの対策として、適切な管理と有効活用が求められます。
塩竈市の空家等に関する施策課題
「空家等の現状」から明らかになった空家等に関する課題は以下の通りです。
[1] 人口減少・高齢化による空家等の増加
全国および宮城県では、空き家が増える傾向にあります。住宅・土地統計調査や国勢調査によれば、特に高齢者人口や高齢者のみの世帯が増加しており、将来的にさらに多くの空家等が発生すると考えられます。
[2] 所有者等の管理意識の希薄化
アンケート調査によると、空家等の管理頻度は「年に1〜数回」が41%を占めています。所有者や相続人が遠方に住んでいる、または相続人が決まっていない場合、管理意識が薄れがちです。その結果、適切な管理が行われず、放置された空家等が最終的に特定空家等の問題に発展することが懸念されます。
[3] 空家等の利活用と除却支援の必要性
アンケート調査によると、空家等の管理や活用に関して、「売却したいが適当な相手が見つからない」という回答が22%を占めています。これは、空家等の状態や金銭的な問題などが原因で、適切な買い手が見つからないことが考えられます。また、「解体したいが解体費の支出が困難」という回答が19%を占めており、管理不全な空家等を除却するための具体的な方法や資金調達について、所有者が十分に対応できていないケースが多く存在します。そのため、改善が進まないという現状が見受けられます。
このように、塩竈市では人口減少と高齢化により空家等が増加し、所有者の管理意識が薄れることで管理が行き届かない問題が顕在化しています。また、空家等の売却や解体に対する支援が不足しているため、所有者が適切に対応できない状況が続いています。これらの課題に対して、適切な管理の啓発や支援策の充実が求められます。
塩竈市の空家等に関する施策の基本方針
塩竈市の空家等に関する施策の基本方針を3点解説します。
[1] 空家等の発生抑制と適切な管理の促進
空家等の対策を進めるためには、まず空家等の発生や増加を抑制することが重要です。空家等の管理は、所有者が自分の責任でしっかり対応することが前提です。そのため、所有者に対して空家等の適切な管理の重要性や、管理不全の空家等が周辺地域に及ぼす問題について広く啓発し、管理意識を高める取り組みを進めます。また、管理不全の空家等に対しては、塩竈市がどのような措置を講じるか方針を示し、特定空家等に該当することを防ぎます。
[2] 空家等および除却後の跡地の活用促進
空家等を地域資源として捉え、その利用促進や再生、除却後の跡地活用に取り組むことが重要です。空き家バンクや空き家改修工事助成事業、空き店舗対策事業、木造住宅耐震診断助成事業などを通じて支援を行い、不動産関係団体との連携を強化して空家等の活用を進めます。不動産関係団体等を空家等管理活用支援法人として指定することも検討します。
[3] 特定空家等への対策
特定空家等は地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすため、塩竈市としてどのような措置を取るか方針を示し、地域の実情に応じてその除却や適正管理を促していきます。
これにより、空家等の発生抑制、適切な管理促進、空家等の再利用や跡地活用を進め、特定空家等の問題を防ぐための包括的な対策が講じられます。
空家等の管理に関する所有者の責任
空き家が適切に管理されていないと、地域の生活環境に悪影響を及ぼします。そのため、法律では「空き家の所有者は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないように、適切に管理する義務がある」(法第3条)と定められています。つまり、空き家の管理は所有者自身の責任で行わなければなりません。
塩竈市の空き家の発生抑制と適切な管理の促進
空き家が増えないようにすること、そして、適切に管理されることが重要です。そのため、所有者が適切に管理できるようにするための取り組みを進めています。
相談体制の整備
空き家に関する情報提供や助言を行うための相談体制を整えます。空き家に関わる問題は多岐にわたるため、市内の関係部署や団体と連携して対応できる体制を構築します。
マッチング支援
空き家の活用を希望する人と空き家の所有者をつなぐための支援を行います。具体的には、「空き家バンク」の登録を促進し、所有者と利用希望者のマッチングを支援します。
所有者の意識向上と理解促進
空き家の管理の重要性や、管理不全の空き家が周辺地域にもたらす問題について、所有者に広く認識してもらうための取り組みを進めます。
- 広報やチラシの配布:固定資産税の納税通知書にチラシやパンフレットを同封し、空き家管理の責任について周知します。
- セミナーの開催:ホームページやセミナーを通じて、空き家管理の重要性や関連する問題について情報提供を行います。
- 法改正の周知:相続登記が義務化されるなど、空き家に関連する法律が改正された場合は、広報や相談の機会を通じて周知・啓発を行います。
- 相続に備えた意識啓発:多くの空き家が相続を契機に発生することを踏まえ、生前から住まいの対処方針を決めておく「住まいの終活」の普及や、空き家を所有し続けるリスクについて啓発します。
以上の取り組みにより、空き家が放置されることを防ぎ、適切な管理を促進する方針です。
塩竈市の空家等及び除却した空家等の跡地活用の促進に関する事項
塩竈市の空き家活用に関する考えをまとめました。
活用の促進について
空き家の中には、修繕を行えば地域交流や地域活性化の拠点として利用できるものもあります。塩竈市では、空き家対策を進める上で、空き家だけでなく、その跡地も含めて地域資源として活用することが重要と考えています。これを実現するために、以下の取り組みを行っています。また、これらの取り組みには、不動産業者などの関係事業者団体と連携することも検討しているとのことです。
空家等に関する情報提供
空き家を有効に活用するために、その情報をインターネットや不動産業者のネットワークを通じて広く提供します。所有者の同意を得た上で、空き家やその跡地の購入や賃借を希望する人に情報を提供します。
- 全国版空き家・空き地バンクへの参加:全国版空き家・空き地バンクに参加し、情報提供の幅を広げることを検討します。
- 流通ネットワークを持つ事業者団体との協定:不動産業者などと協力し、空き家情報の広範な提供を目指します。
- 空き家バンク制度に関する協定:塩竈市は、公益財団法人宮城県宅地建物取引業協会や公益財団法人全日本不動産協会宮城県本部と協定を結び、空き家の売買や賃貸を円滑に進めるための取り組みを行っています。
- 税の特例措置の周知:相続した空き家を売却する際、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例措置があります。この制度を広く知らせ、早期の空き家解消を促進します。
地域資源としての利活用の推進
空き家を地域資源として活用するために、以下の方策を検討しています。
- 空き家の利活用:修繕した空き家を地域交流や地域活性化の場として利用します。具体的には、地域の集会所、交流スペース、宿泊体験施設、移住希望者の居住地などとして活用します。
- 空き家の跡地の利活用:空き家を解体した跡地を駐車場や広場として利用し、地域のまちづくりに役立てます。
- 支援施策:空き家の増加を抑え、利活用を進めるために、立地や管理状況が良好な空き家の利用を支援する施策を検討します。
これらの取り組みにより、塩竈市では空き家とその跡地を地域の資源として有効に活用し、地域の活性化を図る方向性です。
まとめ
塩竈市の空き家や空き地の問題は、全国的な傾向と同様に、人口減少や高齢化が進む中で深刻化しています。しかし、適切な管理と有効な利活用を行うことで、地域資源としてのポテンシャルを引き出すことができます。
塩竈市では、空き家の所有者に対する啓発活動や、相談体制の整備、マッチング支援を行い、空き家の管理と利活用を推進しています。また、空き家やその跡地を地域の交流や活性化の場として活用するための取り組みを進めています。
これから不動産の売却を考えている方は、自分の所有する空き家や空き地の現状を把握し、適切な管理と有効活用を行うための具体的な対策を講じることが重要です。塩竈市の取り組みを参考に、空き家や空き地の売却や管理を計画的に進めていきましょう。
塩竈市に空き家・空き地をお持ちの方、管理にお悩みの方や売却を検討の方はぜひ当社へご相談ください。