不動産売却において共有名義の不動産に関する基本ルールを解説

不動産が共有名義になっている場合、原則として不動産全体の売却や賃貸、リフォーム、担保設定などの重要な行為は共有者全員の同意が必要です。
勝手に一人だけで不動産を処分することはできません。

しかし例外として、自分が所有している持分のみを売却することは法律上可能とされています。
つまり、自分の持分だけを第三者に売却してしまうことはできますが、その場合には新たに第三者と不動産を共有することになるため、様々なトラブルを招く恐れがあります。


目次

共有名義の不動産を勝手に売却することで起こるトラブル

① 見知らぬ第三者が共有者になる

一番多いのが、自分が知らない第三者が新たに共有者となるケースです。

新しい共有者は投資目的で持分を購入している場合が多く、物件に居住している方に対して家賃請求を行ったり、売却を迫ったりすることがあります。

② 強引な持分の買収を迫られる

新しい共有者が物件全体の売却益を狙い、他の共有者に対し強引に持分を買い取ろうとするケースも多発しています。

市場価格より低い金額での買収を迫られたり、心理的にプレッシャーをかけてくることもあり、精神的負担が大きくなります。

③ 共有物分割請求を起こされる

最悪の場合、新たな共有者から共有物分割請求(裁判所への申し立て)が行われ、話し合いでは解決できず、訴訟にまで発展するケースもあります。

裁判になった場合、裁判所の判断によって不動産が競売にかけられるリスクもあります。


共有名義の不動産トラブルへの対処法

1. 新たな購入者から持分を買い戻す

不動産を手放したくない場合は、第三者の持分を自分たちで買い戻す方法があります。

ただし、第三者が意図的に高値で売ろうとするケースもあるため、弁護士を交えて冷静に交渉することが重要です。

2. 共有物分割請求を逆に活用する

逆にこちらから共有物分割請求を行い、裁判所を通じて問題解決を図る方法もあります。

分割方法は現物分割(実際に分ける)、換価分割(売却して現金を分ける)、全面的価格賠償(他の共有者が持分を買い取る)の3つがあり、自分たちの希望に沿った形での解決を目指すことが可能です。

3. 共有者同士での売買を提案する

売却を希望する場合は、他の共有者に自分の持分を買い取ってもらうよう働きかけるのも有効です。

親族間などでの共有状態であれば、相場価格での取引もスムーズに進むケースが多く、第三者とのトラブルを避けることができます。

4. 専門業者への売却

共有持分のみを専門に取り扱う買取業者も存在します。
どうしても持分を早期に手放したい場合は、持分買取専門の業者に相談するのも一つの手段です。

ただし、価格は通常の不動産売却よりも割安になることが多いので注意が必要です。


共有名義の不動産で揉めないために事前にできること

1. 相続登記後すぐに「共有状態を解消する話し合い」を持つ

不動産を相続した際、多くのご家庭でありがちなのが「とりあえず名義は共有にしておこう」という流れです。

兄弟姉妹や親族で均等に名義を分けるケースがほとんどですが、実はこれが後々大きなトラブルの火種になります。

共有名義のままだと、不動産の売却・賃貸・リフォーム・担保設定などあらゆる重要な判断に全員の同意が必要になり、時間も労力もかかります。

そして、関係が疎遠になったり、お互いの意見が合わない場合、話し合いが難航してしまいがちです。

そのため、相続登記を終えたタイミングで、なるべく早めに「今後どうするか」共有者全員で話し合うことが大切です。
具体的には以下のようなポイントを話し合うと良いでしょう。

  • 将来売却するのか、誰かが住み続けるのか
  • 名義はどうするか(単独名義にするのか、共有を続けるのか)
  • 維持管理費や固定資産税の負担割合

特に兄弟姉妹間で疎遠になってしまうと後の協議が難しくなるため、早めに協議の場を設けることが円満解決への第一歩です。


2. 遺産分割協議で「単独名義にする」選択を検討

相続時には遺産分割協議を行いますが、この時点で可能であれば不動産の名義は単独にした方が、後々のトラブルを防ぐことができます

もちろん、他の相続人との公平感を保つために、不動産を取得する人が他の相続人に対して代償金(現金)を支払う「代償分割」という方法もあります。

例えば:

  • 長男が不動産を相続し、妹には現金を支払う
  • 兄弟で均等に相続せず、一人が名義を引き受ける代わりに預貯金などで調整する

この方法を取っておくことで、後々の共有名義トラブル(売却時の意見の不一致や、名義変更時の連絡が取れない等)を根本から防ぐことができます。


3. 将来的な売却を見据えた「持分整理の準備」をしておく

将来的に不動産を売却する可能性がある場合は、早いうちから共有持分を整理しておくことが肝心です。

具体的な準備としては:

  • 共有者同士でお互いの持分を買い取る、あるいは一部譲渡し、名義をまとめておく
  • 将来売却の意志がある場合は、あらかじめ「売却の際は全員が協力する」という合意書や覚書を作成しておく
  • 現金化の必要性が生じた場合のルールを決めておく(例えば、相続税支払いのタイミングなど)

これにより、いざ売却を決断した際に「名義人全員の同意が得られず売れない」といった状況を避けることができます。


4. なぜ名義整理は早めが良いのか?

特に相続後に名義を共有のまま放置してしまうケースが非常に多いのが現状です。

しかし、年数が経つごとに以下のような問題が起こりがちです。

  • 共有者の高齢化・認知症発症 →判断能力がなくなり売却ができなくなる
  • 共有者が亡くなる →さらに次世代へと相続が発生し、名義人が増えてしまう
  • 疎遠・音信不通 →連絡が取れなくなり、売却や管理ができない
  • 管理や税金負担の押し付け合い →結果的に物件が放置・劣化し資産価値が下がる

名義整理を早めに行うことで、相続トラブル・売却困難・管理放棄といった問題を事前に防ぐことができます

まとめ

✅ 共有名義の不動産は全員の同意がなければ売却不可

自分の持分のみは単独で売却できるが、第三者との共有状態になりやすくトラブルの原因に

✅ 新たな共有者とトラブルになった場合は、買い戻し・共有物分割請求・共有者同士の売買・持分業者への売却など複数の選択肢を検討

✅ 将来のトラブル回避のため、早めの名義整理・事前の話し合いが大切

もし現在共有名義の不動産をお持ちで「どう進めて良いか分からない」「将来的に売却したいが不安がある」という場合は、ぜひ一度不動産会社や弁護士などの専門家にご相談されることをおすすめします。

冷静かつスムーズに対処するためには、早めの対応が何より重要です。

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