老後に自宅を売却して住み替えるときの“本当に気をつけるべきこと”

目次

1. まず“目的”を言語化する(資金確保?身軽さ?介護への備え?)

老後の住み替えは、「資金を作りたい(年金補填・医療/介護費用)」「バリアフリー・駅近へ downsizing」「相続を見据えて整理したい」など複数の動機が絡みます。
動機によって選ぶ手段(通常の売却/リースバック/リバースモーゲージ/賃貸への転居 など)と税務・資金計画が変わるため、最初に優先順位を明確化しましょう。
リースバック等は“売却して住み続ける”という選択肢にもなり得ますが、価格・家賃・税務の扱いに特徴があります。


2. 税金は “3,000万円特別控除” と “買換え(繰延べ)特例”の選択制に要注意

老後の自宅売却でも、居住用財産の3,000万円特別控除(譲渡益から最大3,000万円控除)は強力です。
一方で、特定居住用財産の買換え特例(課税の繰延べ)を選べるケースもありますが、併用不可・選択適用です。
所有期間10年以上などの要件や、将来売るときにまとめて課税される点も踏まえ、税理士とセットで比較検討しましょう。
譲渡損失が出た場合は、損益通算・繰越控除も視野に。

リースバックでも3,000万円控除が使えるケースはあるものの、売買・賃貸の実態(契約・登記・支払記録など)をきちんと整えることが前提です。節税狙いで形式だけ整えるのはリスクが高いので、専門家同席で。


3. 住み替えの“段取り”で失敗しがちな3点

(1) 売り先行/買い先行/同時決済の選び方

  • 売り先行(今の家を先に売る):手元資金と最終手取りが確定しやすく、資金計画が立てやすい。
  • 買い先行(先に新居を買う):理想の住まいをじっくり選べるが、二重ローン・空き家期間の固定資産税等コストに注意。
  • 同時決済:二重ローンを避けられる反面、スケジュール調整がタイト。専門会社のサポート必須。

(2) 引渡し日と入居日(新居)をどう合わせるか

決済・引渡しと新居入居日が重なると、引越しが慌ただしくなりがち。
1〜2週間程度の余裕を持たせる/一時的な仮住まいを想定する/同時決済を狙うなど、事前に“日程シミュレーション”しておきましょう。

(3) 住み替えローン・つなぎ融資・二重ローンのリスク

高齢期はローン審査自体が厳しくなります。「売却益で新居を買う前提」なら“売り先行”を基本に
どうしても“買い先行”を取るなら、つなぎ融資・住み替えローンの可否とコストを早めに確認しましょう。


4. 「売っても住み続けたい」派の選択肢:リースバックリバースモーゲージ

リースバック

  • メリット:まとまった資金を確保しつつ、そのまま賃貸で住み続けられる/固定資産税などの維持費は原則オーナー(買主)負担。
  • デメリット売却価格は相場より低くなりやすい/家賃が新たに発生。オーバーローンだと利用できないことも。老後の収支が赤字化しないか、家賃の長期試算が必須

リバースモーゲージ

  • 特徴:自宅を担保に、自宅に住み続けながら借入れを行う。死後(または売却時)に精算。
  • 要注意:“リコース型/ノンリコース型”で相続人の責任が変わる/金利上昇や地価下落で借入上限が減り、資金ショートの可能性も。国民生活センターも、条件や再審査・相続人への影響をよく理解してから契約をと注意喚起。

5. 手続きはIT重説×電子契約で移動・手間を最小化

2021〜2022年の制度改正により、売買でもIT重説・電子契約が全面解禁。来店や紙の郵送を減らし、遠方の子ども世帯とオンラインで意思決定・署名捺印まで完結可能になりました。
高齢の売主が多い住み替えでは、家族・専門家が同席しやすい“オンライン面談”を積極活用しましょう。


6. コストの見落としを“ゼロ”にするチェックポイント

  • 固定資産税・管理費・修繕積立金の日割り清算(引渡し基準)を事前確認。
  • 引越し費用・仮住まい費用・残置物撤去費を見積に入れる。
  • バリアフリー改修の可否・費用(買い先行なら新居の改修を前提に)。
  • 仲介手数料や司法書士報酬、抵当権抹消費用、測量が必要な場合の費用も忘れずに。
  • 医療・介護費の将来キャッシュフローと、家賃(リースバック/賃貸)や共益費を同じ表に並べて“老後全体の家計”を見える化する。

7. 「老後×住み替え」でよくある失敗と回避策

  1. “高く売る”だけを追って、入居タイミングがズレまくる
     → 売り/買いのどちらを優先するか、同時決済を前提に動くかを先に決める。(売り先行が基本安全。)
  2. 特例の選択ミス(3,000万円控除と買換え特例の誤用)
     → 税理士に早めに試算を依頼し、最適な組み合わせを数値で比較。
  3. リースバックで“家賃が払えない”
     → 長寿リスクを踏まえ、家賃×想定居住年数+生活費を作り込む。
  4. リバースモーゲージを“相続人に迷惑をかけない商品”と誤解
     → ノンリコースか・再審査条項の有無を必ず確認。

8. 老後住み替え・売却の“実務”チェックリスト

  • 売却の主目的(資金確保/身軽さ/介護・医療への備え)を家族で共有した
  • 売り先行/買い先行/同時決済のどれで進めるか決めた(同時決済ならスケジュール逆算)
  • 3,000万円特別控除/買換え特例/損益通算などを税理士と比較検討した
  • リースバック/リバースモーゲージの家賃・金利・残債・相続への影響を把握した
  • IT重説・電子契約に対応できる不動産会社を選んだ
  • 固定資産税・管理費の日割り清算、引越・仮住まい費用まで見積に入れた
  • 将来の介護・医療費と住居コストの総額を“寿命長め”に仮定して試算した

まとめ

老後の住み替えは、「税制の選択」「売り/買いの順序と資金繰り」「家賃 or ローンの長期負担力」という3つの軸を、家族・税理士・不動産会社と共に“数字で”確認しながら進めるのが最短ルートです。
リースバックやリバースモーゲージといった選択肢も広がりましたが、価格が下がる/家賃負担が続く/相続人への影響など、見落としやすいポイントが多いのも事実。

まずは「売却益と新居(または賃料)のキャッシュフロー表」を作ること。 そこに税制特例・同時決済・電子契約などの“事故を減らす仕組み”を積み重ねていけば、老後の住み替えはぐっと安全に、そして納得感を持って進められます。


9. 住み替え先 “タイプ別” の選び方と費用感を把握する

老後の住み替えは、
(1)賃貸(一般賃貸/UR/サ高住)、
(2)分譲(シニア向けマンション等)、
(3)施設系(有料老人ホーム等)
の大きく3系統に分かれます。
どれを選ぶかで初期費用・月額費用・将来の介護対応力・相続への影響がガラリと変わるため、キャッシュフロー表を作って比較しましょう。
たとえばサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、入居一時金が小さめで月額利用料(家賃+共益費+生活支援サービス費)が中心になります。
有料老人ホーム(介護付き)よりも自立寄りの方に向きます。
費用相場や有料老人ホームとの違いは、介護ポータル(みんなの介護等)の整理が分かりやすいです。


10. 「売る前に賃貸へ」もアリだが、3,000万円特別控除の“3年ルール”に注意

いったん自宅を賃貸してから売るケースでも、居住用財産の3,000万円特別控除は“住まなくなってから3年目の年末まで”に売却すれば適用可能です(要件あり)。
ただし、建物なら可でも更地化して土地を賃貸すると対象外になるなど細かな要件があるため、計画段階で確認を。
なお、普通借家で長期賃貸にしてしまうと立ち退きが難しく、売却計画が立てづらくなる点にも留意してください。


11. 「家を売っても住み続けたい」場合の深堀り:リースバックの“長寿リスク”

リースバック(家を売って賃貸として住み続ける)は、資金の使途制限がなく、銀行融資に比べ審査が緩く早期現金化しやすい一方、売却価格は相場を下回りやすく、家賃が一生続くため、長寿化時代には“家賃が払い続けられるか”が最大の論点です。
契約期間・更新条件・再売買(買戻し)条項の有無、賃料改定条項などの読み込みは必須。
国民生活センターも、リースバックやリバースモーゲージは事業者ごとに条件が大きく異なるので、契約前に十分な比較検討をと注意喚起しています。


12. リバースモーゲージの“見落としがちな3点”

  1. 再評価リスク
     金利上昇や地価下落で借入限度額が縮むと、途中で資金ショートするケースがあります。
  2. ノンリコースかどうか
     相続人が不足分を負担しない“ノンリコース型”か、相続人に請求が及ぶ“リコース型”かで出口が大違いです。
  3. 再審査・途中解約条項
     商品ごとに条件はさまざまです。自治体実施型も含め、パンフレットだけで判断せず、必ず約款・重要事項説明まで読み込むことをお勧めします。
    国民生活センターは、こうした“商品設計差”を強く指摘しています。

13. 判断能力が落ちる前に──家族信託・任意後見の設計

売却や資産活用を「本人の判断がしっかりしているうち」に設計しておくことは、老後住み替えの大切なリスクヘッジです。

  • 家族信託:信頼できる家族に売却・運用まで任せられる柔軟な設計が可能です。老後資金確保や空き家化の回避に使いやすいです。
  • 任意後見:本人の生活・療養看護などの身上監護に重心が置かれています。財産は“守る(保全)”色が強く、積極的売却・運用は制限されやすい傾向があります。
    「積極的に不動産を活用・売却したいなら家族信託」「生活・介護を含め広く保護したいなら任意後見」という整理が分かりやすいでしょう。

14. “見える化”のすすめ:キャッシュフロー表+選択肢比較表を必ず作る

  • 売却益(税引後)/② 新居(or 家賃)にかかる総額/③ 医療・介護コスト/④ 寿命を長めに仮定した生活費
    を1枚にまとめ、“いまの選択が20年後も持続可能か”を数値で確認しましょう。
    さらに「通常売却」「リースバック」「リバースモーゲージ」「買い替え特例」「3,000万円控除」「損益通算」など、制度・商品・税制を縦軸に、手取り・毎月負担・相続への影響・流動性(売却のしやすさ)を横軸に取った比較表を作れば、家族全員が同じ絵を見ながら意思決定できます。

15. “安心して住み替えを完了させる”ための最終チェックリスト(続)

  • サ高住/賃貸/分譲/施設系の費用とサービス範囲を比較した(要介護度が上がったときの移行も想定)。
  • 自宅を賃貸後に売る場合、“3年目の年末”までの期限と契約形態(普通借家/定期借家)を確認した。
  • リースバックは、売値・家賃・更新条項・買戻し条項・原状回復義務・固定資産税負担を読み込み、長寿リスクに耐えられるかを試算した。
  • リバースモーゲージは、ノンリコースの有無・金利タイプ・評価見直し・相続人への影響を確認した。
  • 家族信託・任意後見のどちらで備えるか、家族・専門家と早期に議論した。
  • 売却時は既存住宅売買瑕疵保険やインスペクション(住宅診断)を検討し、買主の安心と価格維持を狙った。
  • IT重説・電子契約対応の不動産会社を選び、移動負担・紙の手間を最小化した。

16. まとめ――“老後の住み替え”は「税」「資金繰り」「長期生活費」「法的備え」をワンセットで設計する

  • 税制(3,000万円控除/買換え特例/損益通算)を最適化し、
  • 売り先行・買い先行・同時決済の順序と資金繰りを固め、
  • リースバック/リバースモーゲージなどの“住み続ける”選択肢の長寿リスクを具体的に試算し、
  • 判断能力の低下に備えた家族信託・任意後見を前広に準備し、
  • IT重説・電子契約を活用してご家族と一緒にオンラインで意思決定する。

この“フルセット”で進めれば、老後の住み替えは「安心・納得・家族合意」のもと、スムーズに完走できます。
個別の条件(年齢・家計・相続人・健康状態)によって最適解は変わります。
数字(キャッシュフロー)と法的枠組みの両面から、専門家を交えて比較表を作るところから始めてください。
必要であれば、税理士・司法書士・不動産会社をワンチームで組んだ伴走もご紹介できます。
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