昔自分が住んでいた実家を相続したものの、既に自分にはマイホームがあり地元も遠いことから将来
住む予定がないというケースが少なくありません。
そんな中でも実家が既に古くて老朽化しているため、リフォームをしなきゃ住めないという場合や建
て替えする必要があるなんてことが多いです。
また、親が施設に入所したり、病院に入院したりして実家が空き家となることも少なくありません。
今回は空き家となった実家がかなり新しい場合についてご紹介したいと思います。
築年数が浅い空き家の実家を相続
相談者様のお悩み内容
ご相談者様は宮城県にお住まいの40代男性でした。
ご実家は県外にあり、その実家を5年前に建て替えたということでかなり綺麗な状態で性能や
デザインも今時の住宅でした。
バリアフリー化もされており、高齢の方でも安心して快適に生活できる環境でした。
残念なことに建て替え後すぐにお母様が他界されてしまい、お父様が入院されてしまいました
ので、空き家となってしまっていました。
相談者様は、既に宮城県にマイホームを所有しており、現時点では将来的に実家には住む予定
がありませんでした。
先祖代々続く土地である点とあまりにも綺麗で立派なご実家であることから「手放したくない
」、そして「このまま放置したくない」という事でどうしたらよいかとご相談を頂きました。
5年前に建て替え、かなり綺麗で今時の建物
相談者様のご実家は5年前に建て替えたばかりということで、「断熱性」「気密性」「耐久性」「耐
震性」「省エネ性」など、快適に暮らすために必要な性能に優れており、 国が認める長期優良住
宅の基準を満たす程申し分ない自宅でした。
太陽光パネルも設置しており、太陽光発電により電気代も安く済みます。
もし売却に出したとしても良い値段ですぐに買い手が見つかるような物件でした。
お父様の入院はかなり長引きそうだという事と、入院費用を捻出する必要があるということでど
うしたら良いかというご相談をいただきました。
様々な選択肢を検討した結果、現在の自宅をそのまま人に貸すことをご提案させていただきまし
た。
妥当な賃料を調査してみたところ、十分な入院費用を捻出できる見通しが立ったことから賃貸の
方向性で進めることになりました。
お父様の入院費用捻出のためにも、管理をしながら賃貸に出す方向性でのご提案
息子様からのご依頼でしたが、「手放すことは考えていない」という点と、「このまま放置はした
くない」ということを強く望んでおられましたので、管理をしながら賃貸に出す準備(片付けな
ど)をしていく方向性は早い段階で決まりました。
現在のご自宅から実家まで大変距離があるうえ、まとまった休みが取れないと片付けに来られま
せんでしたので片付けには半年程かかりましたが、駅から徒歩数分とかなり立地の良く築年数も
少なかったので、提携不動産会社の協力も得て入居者募集をしたところ、直ぐに成約することが
できました。
実家が残せて良かった!
ご相談者様の声です。
自分も思い出のある地元の土地がなくなってしまうことの寂しさと父が元気になってまた住むかも
しれない、元気になってぜひ住んでほしいという思いがあり、売却という選択肢は取りませんでし
た。
仕事をしながらの片づけは大変でしたが、業者に頼むことなく自分でやり遂げて賃貸契約が無事終
わった時には何とも言えない達成感がありました。
空き家の賃貸を希望する方は大変多いです。
ただ築20~30年程度の場合ですと、入居者を募集するにあたり修繕が必要となるケースが大半です。
修繕費は数十万から、状態によっては100万円以上かかる場合もありますので、かなりの負担になっ
てしまいますが、今回の場合は5年前に建て替えておりましたので、手を加えることなくそのまま賃
貸に出すことができました。
駅徒歩圏内の好立地だったこともあり賃料相場も高く設定してすぐに借り手が付くことになりました。
実家の空き家を賃貸することのメリットとデメリット
実家を賃貸するとき、実家を手放したくない、空き家のままだともったいない、固定資産税などの支
払いの足しにしたい、誰かに使ってもらいたいなどの理由がありますよね。
もし実家を賃貸するとしたらどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
代表的なものを見ていきましょう。
賃貸した場合のメリット
実家を賃貸することで得られるメリットは次のようなことが挙げられます。
・家賃収入を得られる
・人が住むことにより建物が傷みにくくなる
・放火や空き巣から実家を守れる
・不審者が居つくことがない
・賃料収入を基に庭や建物の管理状態を保てる など
収入が得られることで、親の介護費用の捻出になったり、実家を維持するためにかかる費用がまかな
えますね。
この他にも、誰か住んでいることで不審者も寄り付きませんし、建物や庭などで問題があれば借りて
いる人から連絡がきますから、早々に対応することができます。
空き家のままよりも、近隣の方への不安や迷惑といったことも減らせるでしょう。
賃貸した場合のデメリット
メリットがある一方、貸すことによるデメリットも把握しておきましょう。
・一度貸したら、貸主の都合で解約するのが難しい
・苦情対応や滞納、入金管理など賃貸管理の手間が生じる
・短期的な賃貸とする場合は高額な家賃収入は期待できない
・賃貸時のリフォーム費用、設備修理や入居者の入れ換え時の原状回復などの費用がかかる
・不良入居者だと建物や設備を大事に扱わないことがある
賃貸物件として他人に貸す以上、賃貸人としての責任が生じますから
手間や費用が掛かることはあらかじめ知っておくことが重要です。
空き家となった実家は長期で貸す?短期で貸す?
「親の相続があるまで」「ずっと貸し続けてもいい」など、実家を貸すにしてもいつまで貸すのか、
ということも考えないといけません。
短期で貸す、長期で貸す、それぞれメリットや注意点があります。
長期で貸し出す際のメリットと注意点
10年以上の長期で貸し出すときの目的は、親の相続発生後も、空き家になった実家を相続する子が、
資産形成や安定した収入源の確保したいからということでしょう。
このときのメリットと注意点をお伝えします。
メリット
(1)賃借人は長く借りられ、立ち退きを心配する必要がないため、相場条件で貸せる
・短期の契約ではないので相場の賃料で貸すことができる
・入居者が入りやすい
(2)風呂やキッチンなどの設備交換も含めたフルリノベーションができる
・投資した費用を長い期間かけて回収できる
・競合物件より魅力があると入居者が付きやすくなる
注意点
(1)賃貸中の実家を自己利用や建替えなど他にしたいことができても自由に使えない
・貸主の一方的な都合では賃貸借契約を解除できない
・退去してもらうには立ち退き料を支払う場合がある
(2)築30年以上の実家の場合、建物の補修や改修費用がかさむことがある
・給排水管の交換、屋根などの防水、外壁補修や塗装で百万円単位の費用がかかる
・風呂やキッチンも交換する時期がくるので、それらの修理や交換のための費用がかかる
短期で貸し出す際のメリットと注意点
短期で貸し出すときの目的は、親の老人ホームなどの入居費用や、実家の固定資産税や管理費の支払
いのため、相続発生するまでの間だけ賃料収入を得たいということでしょう。
このときのメリットと注意点をお伝えします。
メリット
(1)相続が発生した後など先々の計画を立てやすい
・建て替えて自分で使うなど、実家を自由に使うことができる。
(2)遺産分割するときの対策になる
・親の相続後に実家を売却することで、不動産共有ではなく売買代金で遺産分けできる。
(3)リフォームや補修や改修などの費用負担が軽くなる
・貸す期間が短いため、長期と比べて、賃借人の入退去による原状回復工事の回数や、補修や改修す
ることが少ないので費用負担が軽くなる。
注意点
(1)短期の貸し出しのため、入居者が入りにくい
・賃料は相場よりも低くなる
(2)リフォームなどの費用は抑えること
・無計画に費用をかけると、賃貸している間に回収できないことがある
・綺麗にすればするほど賃料が上がるわけではない
長期と短期のメリットと注意点をお伝えしました。
それぞれメリットを最大限発揮するためには、賃借人との契約形態もポイントです。
長期で貸し出す場合は、賃借人が安心して長く借りられる普通賃貸借契約で貸すことをおすすめします。
一方、短期で貸し出す場合は定期賃貸借契約というものがあります。
空き家となった実家を賃貸に出したい場合の3つの検討ポイント
空き家状態の実家を貸そうと考えている、すでに貸しているけど今の入居者が退去する予定があると
いう方は、これからお伝えする3つのポイントを押さえて失敗や後悔をしないようにしていきましょう。
1.空き家のリフォームは投資回収期間を考慮して内容を検討する
まず1つめは、投資回収期間を考慮してリフォーム内容を決めることです。
理由は、リフォーム費用(=投資)をかけすぎてしまうと、その投資回収に時間がかかってしまうか
らです。
「費用を掛けフルリフォームをすれば、その分高い賃料で貸せる」と考えているお客様は多いのです
が、実はそんな簡単にはいきません。
地域によって、賃料相場の上限というものが存在するためです。
その上限を超えた賃料で貸すには、内装が綺麗なのは前提条件でしかなく、「レインボーブリッジが
一望できる唯一の部屋」のような“その物件でしか手に入らないもの”があることが必須条件です。
どのくらいリフォーム費用をかけても良いのか賃貸収支シミュレーションを作りましょう。
必要な情報
(1)賃料や礼金などの収入
(2)固定資産税や管理費等の支出
(3)3年間、5年間など貸す期間を決める
(4)リフォーム費用の原資(自己資金または借入)
2.貸主都合で契約期間を定められる定期借家契約の利用を検討する
2つめは、定期借家契約を利用することです。
実家を貸して、親の相続までなど一定期間後に、売却したり、建て替えて子が住んだりする場合は、
賃借人に立ち退いてもらう必要があります。
このとき、賃借人と立ち退きを巡って争いになり決着がつくまで年単位でかかることがあります。
こうなってしまうと、計画がとん挫したり、立ち退き料を支払うことになります。
できることなら立ち退き問題を生じさせたくないですよね。
このような問題を生じさせないためには『定期借家契約』での契約が有効です。
普通賃貸借契約
一般的に使われている賃貸契約形態は『普通賃貸借契約(更新型)』です。
契約期間が満了しても、賃借人が住み続けたいという意思表示をすれば住み続けられるのが特徴です。
賃貸人が立ち退いてほしいと言っても、正当事由がなければ賃借人は応じる必要がありません。
正当事由とは、例えば、建物が朽廃し貸し続けると住んでいる人の命の危険や近隣住民にも危害が及
ぶ可能性があるという場合や、賃料を3か月以上滞納していて信頼関係が崩壊しているなどです。
このような正当事由がない場合は、正当事由を補完するため、立ち退き料を支払うことがあります。
立ち退き料を支払って解決できることもあれば、感情的に揉めてしまうとそもそも立ち退きまでに年
単位でかかってしまったり、立ち退き自体を断念せざるを得なかったりするケースもあります。
定期賃貸借契約
『定期借家契約(再契約型)』は、契約期間が満了するときに貸主が再契約を希望しなければ、借主
が契約存続を希望しても契約は終了します。正当事由も立ち退き料も不要です。
ただし、契約満了の半年から1年前までに借主へ契約終了や再契約の通知をする必要がありますので
注意してくださいね。
将来的に空き家を売却したり自ら住んだりする可能性がある場合には、普通賃貸借契約ではなく定期
借家契約を利用することで、貸主側の都合で契約期間をコントロールすることができます。
3.利用用途を検討する
パターン | 月額収入 | メリット | 留意点 |
居住用 | 15万円 | 倉庫より高く貸せる | ・一人にしか貸せないので 空室リスクが倉庫と比べて高くなる ・設備故障の修繕負担あり |
倉庫用 (リビング6帖分 居室5帖分×3部屋 合計21帖分) | 10.5万円 | ・複数人と契約できるため安定収入が得やすい (0になりにくい) ・初期費用を抑えられる ・柔軟性が高い (1部屋のみ貸す等) | ・居住用より収入低い ・倉庫需要がないと収入低い |
3つめに、実家をどのように貸すかも重要ポイントです。
今回は居住用と倉庫用で、収入や運用面などを比較していきます。
<前提条件(都内)>
・築40年、3LDK(リビング10帖、居室6帖(畳)×3部屋)、80㎡
・居住用/月額賃料15万円 契約相手は1名
倉庫用/月額賃料1帖5,000円 契約相手は複数人(1帖単位で貸せるため)
※倉庫の1帖あたりの賃料は、各社のデータを参考としています。
※倉庫で貸せる部分は、人が荷物を置くために使うスペースを除いた部分のため、リビング10帖⇒6帖
分、居室6帖⇒5帖分として計算しています。
居住用として貸す方が賃料収入は多くなりますが、設備修繕など突発的な費用負担があることも計算に
入れておく必要があります。
一方、倉庫はスペースを貸すだけですから、住宅用と比べ設備修繕費用はかかりません。
また、居住用と比較するとドア交換(セキュリティのため)とクリーニングくらいなので、初期投資を
30万円程に抑えることができます。
居住用と倉庫用、貸すときのそれぞれのメリットとデメリットの一例をご紹介しました。
この他にもシェアハウスや民泊などでの活用があります。
貸し方によって収入もかかる費用も全く変わります。
とにかく収入を最大化したいのか、収入は欲しいが初期投資を抑えたいなどの考えを踏まえ、人に住ん
でもらうのか、倉庫などスペースとして貸すのかの活用方法を選択するようにしましょう。
また、このほかにも知っておいてほしいことがあります。
もし親が認知症等で意思判断能力がなくなってしまうと、実家を貸すことはもちろん、再募集したりリ
フォームすることができなくなります。
このときの対策として、親が元気なうちに家族信託をしておくことをおすすめします。
家族信託については専門の司法書士先生のお力をお借りする必要があるため、気になる方はまずご相談
ください。
まとめ
空き家となってしまった実家をどうにかして残せないかということで、賃貸という手段を選ばれた事例
をご紹介しました。立地も建物も良いことから良い条件ですぐに賃貸契約まで進めることができました。
もちろん、賃貸にもメリットだけでなくデメリットやリスクもありますので、それらを把握した上で判
断することが重要です。
また、賃貸といっても様々な手段があります。
賃貸する目的、土地の面積、建物の状態、場所の特性などに合わせた賃貸活用を選ぶ必要があります。
なかなか初めての方には難しい内容なので、興味ある方はまず専門家に相談することをおすすめします。
ぜひ当社にも経験豊富なスタッフがいますので、お気軽にご相談ください。