相続後に兄弟間で揉めて管理もできない広大な土地と実家がバブルの時より安くなってしまったケース

相続

相続時に不動産を何も考えずにそのまま平等に持ち分を兄弟で分けてしまうと後々トラブルに繋がる
ことが多々起きています。
一度揉めてしまうと、なかなか話し合いがまとまらず、時には連絡を絶ってしまい話し合いすらでき
なくなることもあります。
そうしてしまうと、その下の世代にまた相続で不動産が受け継がれ、所有者がさらに分散してしまい
収拾が付かなくなるなんてことになりかねません。
では、どうしたらそのような問題を解決できるのか見ていきましょう。

目次

5人の兄弟が実家をめぐって揉めてしまい10年以上経過…

ご相談者様のお悩み内容

宮城県の田舎に生まれ育った60代男性からの相談でした。
両親が他界された際に、空き家となっていた実家をあまり考えもなく兄弟5人の共有名義にされたそ
うです。
その後、管理や売却のことなどで言い合いが増え、着地点が全くまとまりそうもなかったことから実
家には誰も寄り付かず、管理も行き届かなくなってしまっていました。
兄弟の中には、ほぼ絶縁状態になってしまった人もいました。
敷地600坪もある大きな空き家は20年以上も放置されていたため、最初に訪問した時は林のように木
々が生い茂っていました。
草をかき分け入っていくと、そこには老朽化し、崩壊しかけた空き家がありました。
屋根は抜け落ち、外壁は崩れ、家の中はもう人が住める状態ではありませんでした。
誰かがそこでたき火をしたのか、家の脇には焼け焦げた跡もありました。
時間の経過とともに不動産の価値は下がり続け、バブル当時は数億円で購入したいという人もいたそ
うですが、現在の価値では数千万円と10分の1程度まで下がってしまっていました。
相談者様は一家の長男ということで責任も感じており、ご自身たちの年齢も考え次の世代へ負の財産
を残さないために何とか解決したいとのご要望でした。

売却のご提案。当社が仲を取り持ちご兄弟の意思を確認

当初は、とりあえず管理をして欲しいとのご要望でしたが、ほかのご兄弟とお話しをさせて頂いたと
ころ、それぞれの経済事情から買い手がつくなら売却したいとのご希望であることがわかりました。
所有者の中に実家の土地建物を利用したい人はいませんでした。

当時はほぼ絶縁状態の為、当社が何とか仲を取りもち、お話し合いは難航しましたが、5人揃ってお
話しをして頂いたらなんとわだかまりも無くなり、売却でお話しを進めることになりました。

ただ、そこから価格面で交渉をまとめるのに時間がかかってしまいました。
調整すること数か月、最終的には「この問題を子供たち世代に残すわけにはいかない」と、
価格面合わせて全員に売却で同意を得ることができました。

解体後、すぐ買い手が見つかり売却

ただ管理を行っていなかったため、建物はかなり老朽化し隣家へのご迷惑にもなっていました。
売却前に解体工事を行いましたが、解体費用の捻出が難しかったので、提携の解体業者と交渉し支払
いは売却成立時まで猶予してもらうことができました。

固定資産の納付時期もせまっていましたのであまり時間がなかったのですが、幸いすぐ買い手様もみ
つかり無事に売却できました。

解体費用の問題もクリアしたが、相続の時にきちんと話をしておけばよかったと後悔

相談者様の声です。
お恥ずかしい話、兄弟とも疎遠になりどうしていいのか判りませんでした。
これまで売却を進めてくる不動産業者も多数ありましたが、兄弟と連絡が取れないとわかると話が進
みませんでした。
相続の時にもう少しちゃんと話をしておけばよかったと後悔しました。
とりあえず費用があまりかからない管理を相談させて頂いたのですが、こちらの話をゆっくり聞いて
下さり、管理の許可を頂く必要もあるので兄弟と話をして頂ける事になりました。
他の兄弟も実は売却をし現金を分けたい意向との事でした。
解体費用の問題もクリアーして頂き最後は兄弟5人で昔話をすることも出来ました。
もっと早く相談させて頂けばよかったです。

非常に大きい上に老朽化がかなり進んだ空き家でした。
皆様それぞれが売却の意思をもっておられたのですが、実家ということもありなかなか言い出せない
状況が数年間続いていた状況でした。
最初は管理のご相談でしたが数年間管理をされていなかったため、建物の老朽化が激しく、室内には
お荷物も多く残されており、また雨漏りも数か所ありました。
解体して売却するのが最も合理的な活用方法ですが、やはり思い出の詰まった実家ということもあり
、調整には時間がかかってしまいました。
ただ、最後に「やっと終わった」と皆さんが笑顔になっていただけたので本当に嬉しかったです。

土地の遺産分割で兄弟同士が揉めるケース5つ

親が遺言書を用意しておらず兄弟同士で遺産分割方法を決めなければならない、遺産が土地しかなく
分割しにくいなど兄弟同士が土地の遺産分割で揉めてしまうケースはいくつかあります。
土地の遺産分割で兄弟が揉める原因は、主に下記の5つです。

  1. 親が遺言書を用意していない
  2. 相続財産が土地しかない
  3. 予想していた金額より遺産の現金が減っている
  4. 兄弟の一部が寄与分を主張する
  5. 兄弟の一部が特別受益を主張する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

親が遺言書を用意していない

親が遺言書を用意せず亡くなった場合、兄弟同士で遺産分割方法について決定しなければなりません。
兄弟間で意見が異なる場合、話し合いがまとまらず中々相続手続きを進められない可能性もあるでし
ょう。

  • 故人と同居していたため、実家をそのまま受け継ぎたい相続人
  • 土地はいらないので売却して現金を相続したい相続人

例えば、上記の考えを持つ相続人がいた場合、双方の意見が対立するので遺産分割協議が難航する恐
れがあります。

相続財産が土地しかない

故人が遺した財産が土地しかない場合、土地をそのままの状態で分割する現物分割を行うと相続人間
で不公平感が生まれトラブルになりやすいです。
下記のような分け方もできますが、それぞれデメリットもあります。

遺産分割方法デメリット
換価分割相続人全員で売却に協力、合意しなければならない
代償分割土地を多く相続する人が代償金を用意しなければならない
共有分割共有名義になるため、将来的に権利関係が複雑になるリスクがある
分筆土地によっては分筆できない場合がある

また、田舎にある土地で売却、活用しにくい場合は兄弟全員が土地を相続したがらず揉めてしまう恐
れもあるでしょう。

予想していた金額より遺産の現金が減っている

親が亡くなって兄弟全員で遺された現金や預貯金を確認した際に、予想していたよりも減っていてト
ラブルに発展するケースもあります。
特に、親が亡くなる前に土地や預貯金の遺産分割方法を兄弟同士で話し合っていた場合、現金や預貯
金の減り具合によってはトラブルが起きやすいです。

具体例と共にどんなトラブルが起きやすいか見てみましょう。

【相続発生前の話し合い】

  • 土地などの不動産:5,000万円
  • 現金・預貯金:3,000万円

土地などの不動産は親と同居していた長男が相続し、現金や預貯金は次男が相続すると話し合い、そ
れぞれ合意していた

【相続発生時の状況】

  • 土地などの不動産:5,000万円
  • 現金・預貯金:700万円

親が亡くなる前に医療費や介護費用がかかり、予想以上に預貯金が減ってしまった。

上記のように、相続発生前の話し合いの時点より遺産の預貯金が減少していると、次男が長男に対し
「土地をもらう側は遺産の額が多くてずるい」「預貯金がこんなに減ってるなんて思わなかった」
と主張する恐れがあります。
結果として、兄弟同士で遺産分割協議を行っても話し合いがまとまらず、トラブルが泥沼化してしま
うケースもあるでしょう。

兄弟の一部が寄与分を主張する

長年にわたり故人の介護をしていた相続人や故人の事業を無償で手伝っていた相続人がいる場合、他
の兄弟に対して寄与分を主張する可能性があります。
寄与分とは、亡くなった人の財産の維持や増加に貢献していた相続人が他の相続人よりも多く財産を
相続できる制度です。

一部の相続人が寄与分を主張したとき残りの相続人も主張に納得すれば良いですが、寄与分を認めな
い場合は相続トラブルに発展する恐れがあります。

兄弟の一部が特別受益を主張する

生前贈与を受けていた相続人がいる場合、他の相続人が特別受益を主張する可能性があります。
特別受益とは、ある相続人が亡くなった人から特別に得ていた利益です。

特別受益が認められた場合、特別受益で受け取った財産も遺産に含めて分割方法を決定できます。
そのため、親からの生前贈与など特別受益を受けていた相続人は遺産の取り分がその分減ってしまい
ます。

​生前贈与を受けていた相続人の多くは特別受益を認めず、相続財産を受け取りたいと主張する​​ので相
続トラブルに発展する恐れがあります。​

相続税の納税資金を用意できない

遺産の中で土地などの不動産が占める割合が多い場合は、相続人が相続税の納税資金を用意できない
恐れもあります。
相続税は現金一括納付が原則となっているため、遺産の中で不動産が多い場合は相続人が自分の資産
から相続税を支払わなければならないケースもあります。

一部の相続人は自分の資産で相続税を用意できるが、残りの相続人は用意できず土地の売却を希望す
るなど、相続税の納税だけでなく遺産分割のトラブル方法にまで発展する可能性もゼロではありませ
ん。

土地の遺産分割によるトラブルを避ける方法

兄弟同士による遺産分割のトラブルを避けるには、下記の方法で相続対策や相続手続きを進めるのが
良いでしょう。

  1. 生前のうちに相続対策をしておく
  2. 換価分割や代償分割を検討する
  3. 司法書士や弁護士に相続手続きを依頼する
  4. 相続放棄する
  5. 寄与分を主張するための証拠を用意しておく

それぞれ詳しく解説していきます。

生前のうちに相続対策をしておく

兄弟同士で相談して遺産分割方法を決めるとトラブルになりそうであれば、生前のうちに相続対策し
ておきましょう。
相続対策しておけば自分が希望する人物に土地などの財産を受け継げますし、相続人である兄弟が遺
産分割方法を決めなくてよくなります。

遺産承継先を事前に決めておく相続対策にはいくつか方法があり、それぞれ下記の通りです。

  1. 遺言書作成と遺言執行者の選任
  2. 生前贈与
  3. 家族信託

それぞれの方法にはメリットとデメリットがあるので、自分に合う方法で相続対策を行いたい場合、
相続に詳しい司法書士や弁護士に相談するのが良いでしょう。

換価分割や代償分割を検討する

遺産のほとんどが土地を占めているが、兄弟で公平な遺産分割を行いたい場合は換価分割や代償分割
を検討しましょう。
換価分割や代償分割は、遺産分割方法のひとつでありそれぞれ下記の特徴があります。

遺産分割方法特徴
換価分割相続した土地を売却し、売却代金を各相続人で分け合う
代償分割遺産を他の相続人よりも多く相続した人が、多く相続した分を現金などで補填(代償)する

遺産が土地しかない場合でも換価分割や代償分割であれば、平等に遺産分割を行えます。
また、将来的に共有者間でのトラブルなどのリスクが発生する心配はありません。

ただし換価分割は土地を売却するので、先祖代々受け継いできた土地や故人との思い出が残った実家
を手放すことになります。
また、代償分割では土地など遺産を多く取得した相続人が代償金を用意しなければなりません。

司法書士や弁護士に相続手続きを依頼する

兄弟同士で遺産分割方法について話し合うとトラブルに発展しそうな場合は、相続に精通した司法書
士や弁護士に手続きや遺産分割協議を依頼しても良いでしょう。
司法書士や弁護士であれば、中立的な立場から遺産分割協議の内容について提案可能です。

また、司法書士や弁護士は相続人調査や相続財産調査から対応できるので、相続手続きを効率よく進
められるのもメリットです。
兄弟全員が平日日中は仕事をしていて書類収集などを行えない場合や今後も円満な関係を続けるため
に相続トラブルは絶対に避けたい場合は専門家に頼ることをおすすめします。

相続放棄する

相続財産が土地しかなく自分はいらないと思っているときや残りの相続人がトラブルに発展しそうで
巻き込まれたくないときは、相続放棄を検討しても良いでしょう。
相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も相続せず、相続人としての地位を失う制度です。

相続放棄をすれば遺産分割協議に参加する必要はなくなるため、相続トラブルに巻き込まれることは
ありません。
相続放棄する際には、自分が相続人であると知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立て手続きをす
る必要があります。
申立て方法および必要書類は、下記の通りです。

手続きする人相続放棄する人法定代理人
提出先亡くなった人の住所地を管轄する家庭裁判所
費用収入印紙:800円分連絡用の郵便切手代:1,000円程度
必要書類相続放棄申述書亡くなった人の死亡および相続人であることがわかる戸籍謄本亡くなった人の住民票除票もしくは戸籍附票 など

寄与分を主張するための証拠を用意しておく

長年にわたる介護や故人の事業を無償で手伝っていたなど寄与分を主張したいのであれば、他の相続
人を納得させるだけの証拠を用意しましょう。
相続人同士の話し合いでは解決できず、遺産分割調停や訴訟に進む場合にも裁判所を納得させられる
客観的な証拠が必要になります。

具体的には、下記の証拠を用意しておくのが良いでしょう。

【亡くなった人の介護をしていた場合】

  • 亡くなった人の診断書やカルテ
  • 亡くなった人の要介護認定通知書
  • 介護ノートや日記など介護内容や介護にあてた時間を記録したもの

【亡くなった人の事業を手伝っていた場合】

  • タイムカード
  • 契約書(亡くなった人の事業に無償で従事することが記載されているなど)
  • メールのやり取り、証言
  • 亡くなった人の確定申告書や事業用の通帳
  • 相続人の給与明細書(一般的な給料相場より著しく安く働いていた場合)

【亡くなった人にお金を渡していた場合】

  • 不動産売買契約書
  • 亡くなった人の通帳
  • 寄与した人の通帳や振込通知書
  • クレジットカードの利用明細書

上記のように、寄与分の種類によっても必要な証拠は変わってくるため、寄与分の主張に必要な証拠
を用意できているか自分で判断するのが難しいこともあるでしょう。
証拠が用意できたか客観的な立場から判断して欲しい場合は、相続トラブルに詳しい弁護士に相談す
るのもおすすめです。

まとめ

相続で兄弟間の揉め事が起きることは少なくありません。
一旦起きてしまったいざこざを当事者たちだけで解決するのは難しい問題です。
時間も労力もかなり掛かってしまいますが、解決しないと次の世代に負の財産を残してしまうことに
なります。
そこで不動産会社に相談いただければ、必要に応じて弁護士や司法書士の先生にもお力をお借りしな
がら、不動産に関する問題を解決するお役に立てるようお手伝いさせていただきます。
お困りの際やお困りになる前にでもぜひご相談ください。

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