岩沼市の空き家・空き地に関する現状と将来
近年、日本では人口減少と少子高齢化が大きな問題となっており、高齢者の割合は29%を超え、今後も増加が予想されています。
同時に、日本の総住宅数と総世帯数も増加を続けており、総住宅数が総世帯数を上回る状況が続いています。
これにより、空き家の数も増加し、適切な管理が行われていない空き家が多く存在しています。
特に地方では、都市部への人口流出により空き家率が高く、今後も増加が予測されています。
この問題に対応するため、地域住民の安全と生活環境の保全を目的として「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成26年法律第127号)が平成27年5月26日に施行されました。
しかし、その後も空き家の増加は続いており、特に使用目的のない空き家はこの20年間で約1.9倍に増加しています。
今後も空き家の増加が見込まれることから、空き家の適切な管理とその活用拡大を図るため、令和5年6月14日に法の一部が改正され、令和5年12月13日に施行されました。
岩沼市でも、国勢調査によると令和2年に人口が減少しており、住宅の老朽化と居住者の高齢化が進むと、適正に管理されない空き家の問題が深刻化することが懸念されています。
岩沼市の新たな総合計画では、持続可能なまちを目指し、人口減少から人口増加への転換を図ることを目指しています。
このような背景から、空き家の適正管理と利活用の促進を効率的かつ効果的に進めるために、岩沼市では「空家等対策計画」を策定することになりました。
人口の推移と将来推計
国勢調査によると、岩沼市の総人口は平成27年まで緩やかに増加していましたが、令和2年にかけて減少傾向にあります。
特に65歳以上の高齢者人口は、平成7年の総人口の13.7%から令和2年には26.7%と約2倍に増加しており、高齢化が進んでいます。
一方で総世帯数は調査年ごとに増加しており、中でも高齢者一人世帯と高齢夫婦のみの世帯の増加が顕著です。
具体的には、高齢者一人世帯の割合は平成7年の8.8%から令和2年には20.8%に増加し、高齢夫婦のみの世帯も平成7年の16.2%から令和2年には26.0%に増加しています。
令和2年の時点で、高齢者がいる世帯のうち、高齢者のみで生活している世帯(高齢者一人世帯、高齢夫婦のみの世帯)が46.8%を占めています。
このように、核家族化が進行し、高齢者人口の増加および高齢者のみの世帯の増加に伴い、将来的には施設への入所などで居住者が減少し、空き家が増加することが予測されます。
このデータから、岩沼市では高齢化とそれに伴う空き家問題への対応が急務であることが明らかです。
高齢者が安心して暮らせる環境づくりと、空き家の適切な管理と利活用が重要な課題となっています。
全国・宮城県・岩沼市の住宅数と空き家数の推移
平成30年に総務省が実施した住宅・土地統計調査(令和元年9月30日公表)によると、全国の総住宅数は6,240万戸、総世帯数は5,400万世帯で、住宅ストックが量的には充足していることがわかります。
このうち、空き家の数は約849万戸で、全国の総住宅数に占める割合は13.6%です。
「賃貸用又は売却用の住宅」および「二次的住宅」を除いた「その他の住宅」に属する空き家の数は約349万戸で、全国の総住宅数に占める割合は5.6%ですが、過去20年間で約1.9倍に増加しています。
岩沼市の場合、平成30年の調査によると総住宅数は18,950戸で、そのうち空き家の数は2,010戸、総住宅数に占める空き家の割合は10.6%です。
「その他の住宅」に属する空き家の数は460戸で、これが総住宅数に占める割合は2.4%です。
平成25年度における空き家総数と空き家率が一時的に低くなった要因として、東日本大震災による影響が考えられます。
これまでの各年では、岩沼市の空き家率は全国平均および宮城県平均よりも低い水準でしたが、今後は空き家の動向に注意が必要です。
特に、高齢化の進行や核家族化により、将来的には空き家が増加する可能性が高まっています。
実態把握調査による空家等の現状
アンケート調査の概要
岩沼市では、令和2年3月に空家等の実態把握を目的として、対象物件の所有者に対するアンケート調査を実施しました。
この調査は、空家等に関する困りごとや今後の見通しを把握するために行われました。
対象地区は市内全域で、対象物件は55件、調査期間は令和2年3月25日から31日まででした。
調査結果
アンケートの送付数は55件で、有効回答数は30件、回答率は54.5%でした。
所有している建物が空家であると回答したのは22件(73%)、現在居住していると回答したのは3件(10%)でした。
空家の管理状況については、「定期的に管理している」が11件(41%)、「定期的な管理は行っていない」が6件(22%)でした。
空家になった理由としては、「居住者が死亡したから」が最も多く13件(47%)、次いで「居住者が移転したから」が7件(25%)、「居住者が福祉施設に入所したから」が4件(14%)という結果でした。
空家の今後の処置については、「売却したい」が16件(41%)と最も多く、「解体したい」が9件(23%)、「賃貸として貸出ししたい」が6件(15%)でした。
しかし、解決までの見通しが立っていると回答したのは6件(22%)にとどまり、「見通しが立っていない」が17件(63%)、「対応していない」が3件(11%)となり、計74%の所有者が見通しが立っていないと回答しました。
空家解決に向けての障害としては、「解体費用の支出が困難」が最も多く8件、次いで「遠方にいて身動きが取れない・時間が取れない」が4件、「相続が確定するまで時間がかかる」「家財等の処分方法が分からない」「売却したいが立地等の条件が悪い」が各3件という結果でした。
分析と考察
アンケート結果から、空家となっている建物でも比較的多くが定期的に管理されていることが分かりました。
しかし、時間の経過とともに管理されない空家が増加することが予想されます。
また、空家の解体や活用について見通しが立っていないと回答した所有者が多く、特に解体費用の支出が困難であることが主な障害となっています。
助成金などの自治体の支援を望む声が多く見られ、家財の処分方法が分からないという問題も指摘されました。
これらの問題に対しては、手続きや方法を周知・啓発していくことが重要です。
具体的な支援策としては、解体費用の補助や家財の処分方法に関する情報提供が考えられます。
今後、空家の増加を防ぐためには、空家の適切な管理と利活用を促進する対策が必要です。
また、所有者が空家の解決策を見つけやすくするための支援体制の整備が求められます。
空き家等の問題点
空き家が周辺地域にもたらす問題と空き家等の所有者に関する問題をまとめました。
空き家が周辺地域にもたらす問題
- 防災上の問題
- 老朽化した空き家が倒壊する危険性。
- 風や雨によって建物の一部が剥がれ落ちたり飛ばされたりする可能性。
- 防犯上の課題
- 空家が不法侵入や不法滞在の場となり、放火などの犯罪が起こりやすくなる。
- 環境・衛生上の問題
- ごみの放置や不法投棄、草木の繁茂により悪臭や害虫が発生する。
- 植物が隣の敷地に侵入したり、落ち葉が飛散する問題。
- 景観上の問題
- 著しく破損や腐食が進むことで景観が悪化し、地域のイメージが低下する。
空き家等の所有者に関する問題
- 心理的な問題
- 遠方に住んでいるため管理が難しく、また管理責任を意識しにくい。
- 盆や正月に帰省時の宿泊先として使うため、手放すことに抵抗がある。
- 手法上の問題
- 仏壇や家財道具が残っており、整理や処分に抵抗がある、または方法がわからない。
- 売却や賃貸を希望しても、買い手や借り手が見つからない。
- 接道要件や都市計画区域などの条件により、流通や利活用が難しい。
- 相続手続きに時間がかかる。
- 経済的な問題
- 適切な管理や改修、取り壊しにかかる費用を負担できない。
- 取り壊すと住宅用地特例が適用されず、固定資産税(土地)の負担が増えるため、空家のまま放置される。
空き家の適切な管理の促進について
空き家の所有者の責任
空き家が周辺に悪影響を与えないように管理する責任は、まず所有者にあります。
法律では「空き家の所有者や管理者は周囲の生活環境に悪影響を及ぼさないよう適切に管理するよう努める」と定められています。
令和5年12月13日の法律改正により、所有者は国や地方公共団体の施策に協力する義務も追加され、所有者の責任が強化されました。
空き家の管理促進の取り組み
所有者が自分で管理するのが基本ですが、様々な理由で管理が難しい場合があります。
このため、市町村は所有者に対して情報提供や助言、必要な援助を行うことが法律で求められています。
- 総合相談窓口の設置 本市では、空き家の所有者からの相談に対応するための総合相談窓口を設置します。
相談を基に助言や情報提供を行い、適切な管理を促します。
また、空き家問題は多岐にわたるため、関連する部署や団体と連携して対応します。 - 所有者の意識啓発と理解の促進 空き家の適切な管理の重要性や周辺への影響について所有者に理解を深めてもらうための啓発活動を行います。
また、空き家の多くが相続によるものと考えられるため、相続登記の重要性についても周知します。- 空き家管理の意識啓発 法の趣旨を認識してもらい、放置によるリスクや周囲への影響、適切な管理の重要性を伝えます。具体的には、ホームページや広報紙で情報提供を行い、固定資産税の納税通知書にチラシやパンフレットを同封します。
- 相続登記の啓発 円滑な相続のために、セミナーや相談会を開催し、相続登記の重要性を啓発します。また、相続不動産の未登記が空き家の原因になるため、登記を促すポスターの掲示や固定資産税の納税通知書にチラシを同封するなどの取り組みを行います。
空き家とその跡地の活用促進について
活用促進の背景
全国的な人口減少が進む中、岩沼市でも平成27年から令和2年にかけて人口が減少しています。
しかし、市の総合計画では、活力ある持続可能なまちを目指して、シティプロモーションの強化、子育て環境の充実、移住定住の促進、市街地整備などの施策により人口増加を図るとしています。
この計画は、SDGsの目標「11:住み続けられるまちづくりを」の視点から進められ、持続可能なまちづくりに貢献することを目指しています。
空き家は修繕などにより、地域交流や地域活性化の拠点として利用できる可能性があります。
人口増加を見据えた空き家対策を進める上で、その跡地も含めて空き家を地域資源として活用することが重要です。
法律では、市町村が空き家やその跡地の情報提供や活用のための対策を行うよう努めることが求められています。
岩沼市では以下の取り組みを通じて、空き家の地域資源としての活用を促進します。
地域資源としての空き家活用の推進
- 空き家活用に関する相談事業 空き家の所有者からの相談に応じて、市内の空き家活用を促進するための協定を結んでいる公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会および全日本不動産協会宮城県本部の協力のもと、空き家活用に関する相談事業を行います。
- 助成制度の活用促進 昭和56年5月以前に建てられた木造戸建て住宅については、住宅耐震診断や耐震改修にかかる費用を補助することで、所有者がリフォームを実施しやすくする機会を増やします。
- 新たな助成制度の検討 空き家の解体費用の補助や空き家バンクの導入など、空き家やその跡地の活用を促進するための支援策を検討します。これには空き家への移住や定住も含まれます。
- 空き家活用促進区域と支援法人の指定検討 法改正により新設された規制の合理化などで空き家の用途変更や建て替えを促進する「空き家活用促進区域」の設定や、所有者への情報提供や相談対応を行う「空き家管理活用支援法人」の指定については、総務省が実施する住宅・土地統計調査の結果や、市が毎年実施する現地調査の状況を踏まえて、必要に応じて検討します。
岩沼市ではこれらの施策を通じて、空き家を地域資源として活用し、持続可能なまちづくりを目指しています。
岩沼市にお住まいで自宅の売却を検討されている方、岩沼市に空き家・空き地を所有されている方で管理や売却など何かしらお困りの方は当社までお気軽にご相談ください。