日本は現在、人口減少と超高齢社会の進行に直面しています。その結果、相続などで発生する利用されていない空き家が年々増加しています。これらの空き家の中には適切に管理されていないものがあり、倒壊の危険や衛生環境の悪化、防災・防犯上の問題など、多くの社会生活に悪影響を与えています。本市でも、管理不全の老朽空き家が増えてきています。
このような全国的な問題に対応するため、平成27年5月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。この法律では、空き家対策を計画的に実施する責任が市町村に課せられています。多賀城市では、この法律に基づき、平成30年3月に「多賀城市空家等対策計画」を策定しました。
この計画は、空き家問題に対する根本的な対策を示しており、空き家の「予防」、「活用」、「措置」を基本としています。市民、事業者、行政、および関係機関が連携して、魅力あるまちづくりを目指し、空き家対策に取り組む方向性を示しています。
今後も既存住宅の老朽化や少子高齢化の進行に伴い、空き家の増加や問題の拡大が予想されるため、「第二次多賀城市空家等対策計画」を策定し、総合的な空き家対策のさらなる推進を図っていく方針を打ち出しています。
多賀城市における空き家の状況
総務省が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家率は一貫して増加傾向にあります。宮城県においても平成25年には減少しましたが、平成30年の調査では再び増加に転じました。本市においても同様に、平成25年には減少しましたが、平成30年の調査では前回調査より0.7ポイント増加しています。
空き家率の推移
- 平成25年
- 全国: 空き家率 13.1%
- 宮城県: 空き家率 13.7%
- 多賀城市: 空き家率 13.0%
- 平成30年
- 全国: 空き家率 13.6%
- 宮城県: 空き家率 12.0%
- 多賀城市: 空き家率 9.7%
空き家の分類
空き家は次の4つに分類されます。
- 二次的住宅
- 賃貸用の住宅
- 売却用の住宅
- その他の住宅(利用目的が決まっていない空き家)
本市における空き家の内訳
本市の空き家総数のうち、最も割合が高いのは「賃貸用の住宅」です。「その他の住宅」の割合は1%から2%台で比較的低く推移しています。
- 平成25年
- 賃貸用の住宅: 10.1%
- その他の住宅: 1.6%
- 平成30年
- 賃貸用の住宅: 7.0%
- その他の住宅: 1.9%
本市では「賃貸用の住宅」の空き家が多く、「その他の住宅」の割合は全国平均に比べて低い水準を維持しています。今後も空き家の動向に注意し、適切な管理と活用を進めることが重要です。
多賀城市の空き家対策の課題
1. 所有者の課題
空き家の所有者が売却や利活用の意向を持たず、空き家を放置することで地域住民に悪影響を与えるケースが多く見られます。特に遠方に住む所有者は、空き家の状況把握や維持管理が難しく、適切な管理がされていないことが多いです。加えて、所有者の高齢化により、施設入所や相続放棄で所有者が不在になるケースや、相続登記が未完了で所有者が不明になるケースも増えています。
これらの問題に対処するためには、所有者に対して空き家の適切な管理に関する情報提供や管理意識の向上を図ることが重要です。また、管理支援や相談サービスの充実、相続登記手続きの促進も必要です。
2. 中古住宅の流通・利活用の課題
市場性の低い中古住宅は流通や利活用が進まず、適切に管理されない空き家となり、地域住民に悪影響を与えています。空き家の利用希望者と所有者の間で情報が不足しているため、利活用が進んでいません。
この問題を解決するためには、空き家バンクなどを通じて情報提供を行い、流通促進を図ることが求められます。
3. 庁内および関係団体との連携の課題
空き家問題は多岐にわたるため、庁内の関係各課で連携し、対策を推進する協議を行ってきました。しかし、相続問題や資金面、所有者の生活状況などが深く関わるため、庁内の横断的な連携や関係団体との連携体制をさらに充実させることが必要です。
これらの課題に対処することで、地域の生活環境の改善や空き家の有効活用が期待されます。
多賀城市の空き家対策の基本方針
1. 空き家対策計画の対象区域
空き家対策計画の対象区域は市内全域です。近年、市内でも空き家の倒壊の危険や防災・防犯上の不安、庭木や雑草の繁茂など、老朽化した空き家に関する相談が増えています。所有者に連絡を取って対応していますが、未相続や相続放棄、所有者の管理放棄などにより対応が困難な空き家が増加傾向にあります。今後も高齢者世帯の増加や世代間継承が進まず、空き家の増加が予測されます。特定の地域に集中するわけではないため、市全体を対象に公平な対策が必要です。適切に管理されない空き家は、地域の生活環境を悪化させ、不動産価値の低下や犯罪の原因にもなるため、市内全域を対象に対策を行います。
2. 対象とする空き家の種類
対象とする空き家は、法律で規定された「空家等」です。この「空家等」には、放置すれば危険や衛生問題を引き起こす「特定空家等」も含まれます。
空家等対策の特別措置法による定義
- 空家等: 使用されていない建物やその敷地。ただし、国や地方公共団体が所有・管理するものは除く。
- 特定空家等: 放置すれば危険や衛生問題、景観の悪化を引き起こし、周辺環境に悪影響を与える空家等。
3. 対策の基本方針
基本原則 空き家は私有財産であるため、所有者が自ら責任を持って管理する義務があります。対策は公平に行い、所有者の個人情報は慎重に取り扱います。
啓発活動 空き家の発生を抑えるために、適切な管理方法の周知や啓発活動を進めます。
相談体制 地域や住民からの通報・相談に迅速に対応するための体制を整えます。
早期対策 早期発見と状況把握、所有者への働きかけ、地域と連携した取り組みの仕組みを作り、具体的な対策を講じるための調査・研究を行います。
活用支援 支援制度や補助制度を調査・研究し、空き家の管理や解体、活用について所有者に助言や斡旋を行います。また、空き家バンク制度を活用して情報を発信し、所有者と利用希望者のマッチングを支援します。
措置対応Ⅰ 地域や専門家の意見や協力を得て、所有者に適切な助言や指導を行います。
措置対応Ⅱ 「勧告」、「命令」、「代執行」については、所有者の事情も考慮し、公平かつ妥当な判断で行います。
4. 計画期間
計画期間は令和3年度から令和7年度までの5年間です。長期的な視点で対策を実施するため、計画期間中でも国の施策や社会情勢の変化に応じて見直しを行います。
多賀城市の空き家やその跡地の活用促進に関する対策
空き家やその跡地の活用については、不動産市場での取引を通じて推進することが基本となります。以下のような支援を通じて、空き家の利活用を促進します。
1. 空き家活用に関する情報提供
市のホームページなどを活用し、空き家の所有者に対して様々な活用方法の情報を提供します。また、空き家バンク制度を利用して、売却や賃貸を希望する空き家情報を広く発信し、空き家の流通を促進します。
- 空き家バンク制度: 空き家を売りたい・貸したい所有者が市に物件を登録し、市はその情報をホームページで公開します。空き家を買いたい・借りたい人への情報提供も行います。
2. 活用が難しい空き家の処理と流通促進
地域環境の悪化や活力低下を防ぐため、不動産仲介業者や関係事業者団体と協力し、活用が難しい空き家の除却を促進します。また、その跡地の一体的な利用を検討し、関係団体と連携して地域に応じた柔軟な活用策を提案します。
3. 空き家活用に関する調査研究
空き家の利活用について、関係部門や自治会と連携して、地域資源としての有効な活用方法を調査・研究します。
4. 市街化調整区域での空き家活用
市街化調整区域内の空き家は法令などの制限があり、一般の市場での流通が難しい状況です。こうした区域内の空き家の利活用については、関係部門と連携して慎重に検討します。
これらの取り組みによって、空き家の管理不全を防ぎ、地域の生活環境の改善や活性化を図ります。
多賀城市の空き家・空き地の適切な管理について
管理の重要性
空き家や空き地の適切な管理は、周辺環境の保全や地域の安全確保にとって重要です。所有者は、法律に基づき、空き家等が地域社会に悪影響を与えないように管理する責任があります。適切な管理が行われない場合、地域住民に多大な迷惑をかけることになります。
管理の方法
以下に、空き家や空き地の管理方法を紹介します。
- 定期的な点検: 定期的に空き家や空き地の状態を確認し、必要な修繕や清掃を行います。
- 防犯対策: 不法侵入を防ぐため、施錠をしっかり行い、防犯カメラの設置や近隣住民との連携を強化します。
- 環境整備: 草木の剪定やごみの処理を行い、清潔な環境を保ちます。
- 専門業者の利用: 自分で管理が難しい場合は、管理業者に依頼することも検討しましょう。
所有者へのサポート
多賀城市では、空き家や空き地の管理をサポートするために、以下の取り組みを行っています。
- 相談窓口の設置: 空き家や空き地の管理に関する相談窓口を設置し、所有者からの相談に対応します。
- 啓発活動: 広報誌やホームページを通じて、適切な管理の重要性や方法を周知しています。
- 支援制度の導入: 管理費用の助成や、管理に必要な情報の提供を行います。
法的措置
適切な管理が行われない場合、法的措置が取られることがあります。例えば、所有者に対して管理の改善を命じる勧告や命令が出されることがあります。また、最終的には代執行によって空き家が撤去されることもあります。これにより、所有者に対しては費用が請求されることになります。
多賀城市の空き家・空き地の有効活用について
空き家・空き地の利活用の重要性
空き家や空き地は、適切に活用することで地域社会に貢献することができます。例えば、空き家をリノベーションして賃貸物件として利用することで、地域の住宅供給に貢献できます。また、空き地を地域の交流スペースとして活用することも考えられます。
利活用の方法
空き家や空き地の有効活用方法には以下のようなものがあります。
- 賃貸物件として活用: 空き家をリノベーションして賃貸物件として活用することで、収益を得ることができます。
- シェアハウスとして活用: シェアハウスとして利用することで、若者や移住者の住まいとして活用できます。
- 地域の交流スペースとして活用: 空き地を地域のイベントスペースや公園として活用することで、地域の活性化に貢献できます。
- 事業用地として活用: 空き地を事業用地として利用することで、地域経済の活性化につなげることができます。
多賀城市の支援制度
多賀城市では、空き家や空き地の有効活用を支援するために、以下のような制度を導入しています。
- 空き家バンク制度: 空き家を売りたい・貸したい人と、買いたい・借りたい人をマッチングする制度です。これにより、空き家の流通を促進します。
- 相談窓口の設置: 空き家や空き地の活用に関する相談を受け付け、具体的なアドバイスを提供します。
まとめ
多賀城市の空き家や空き地の管理と活用は、地域社会全体の問題として取り組む必要があります。適切な管理と有効活用を通じて、地域の安全・環境の向上、経済活性化に貢献することができます。具体的な管理方法や活用事例、支援制度を活用し、自宅の売却や空き家・空き地の利活用を進めていきましょう。情報収集を十分に行い、適切な管理と活用を実現することで、快適な生活環境を維持し、地域全体の発展に寄与することが期待されます。
これから空き家や空き地の管理・活用を検討している方は、多賀城市の支援制度を積極的に活用し、専門家や関係機関のアドバイスを受けながら、計画的に進めていくことをおすすめします。ぜひ当社へお気軽にご相談ください。