仙台市の空き家の売却の現状と背景
仙台市では、
空き家の問題が深刻化しています。
この記事では、
仙台市の空き家の売却の現状と背景について詳しく解説します。
5年に1度行われる住宅・土地統計調査(総務省)によって、
日本における空き家の全体的な把握を行っています。
直近の国の調査(総務省「平成30年住宅・土地統計調査」)では、
仙台市の空き家率は11.1%と、全国平均を下回っています。
仙台市の空き家数、
空き家率はいずれも平成20年までは増加傾向でしたが、
平成25年に減少したものの、
平成30年には再び増加に転じています。


市民から空家等の管理不全について情報提供を受け付けた件数は、
近年横ばいですが、
改善がなされた等の対応が終了した件数は、
平成28年度をピークに減少しています。
令和3年12月末時点で、
本市の管理不全な空家等は特定空家等29件とそれ以外283件の計312件です。


出典:仙台市市民局市民生活課 仙台市空家等対策計画(第2期)【概要版】-令和4年度~令和8年度-
年齢別人口構成の推移
仙台市は、
人口100万人を超える政令指定都市ですが、
高齢化が進行しており、
平成 27 年で 65 歳以上の高齢人口割合は 21.7%となっています。
高齢人口割合は、
今後も増加し続けるものとみられており、
令和12 年には 30.7%まで上昇すると推計されています。
年齢別人口構成の推移


資料:平成 27 年までは国勢調査(総務省統計局)
令和2年以降は日本の地域別将来推計人口(国立社会保障・人口問題研究所)
65 歳以上の高齢者がいる世帯の推移
仙台市の 65 歳以上の高齢者がいる世帯は、
平成 30 年で約 16.2 万世帯となり、
増加傾向にあります。
中でも高齢者単身世帯が最も増加しています。
65 歳以上の高齢者がいる世帯数の推移


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
人口分布
仙台市の人口分布の状況は、
郊外部よりも鉄道駅周辺部に人口集積が見られます。
なお、
将来人口が減少する方向に転じた場合においても
鉄道駅周辺部では一定の人口集積が見込まれますが、
郊外部では減少が予想されます。
人口分布(2015 年)


資料:平成 27 年国勢調査(総務省統計局)
人口分布(2045 年)


資料:メッシュ別将来人口推計(国土交通省国土政策局)を基に仙台市で作成
出典:仙台市空家等対策計画(第2期)— 令和4年度~令和8年度 —
住宅の状況
住宅ストックの推移
仙台市の住宅ストックを見ると、
平成 30 年の住宅総数は約 58 万戸となっています。
一方、
主世帯数は約 51 万戸となっており、
住宅ストックが主世帯数を約 13%上回っており、
住宅余剰の状況が引き続き見受けられます。
平成 15 年から平成 30 年の住宅総数及び主世帯数の推移をみると、
住宅総数は約7.9 万戸増加、
主世帯数は約 8.3 万世帯増加しており、
ともに増加傾向となっています。
住宅ストックの推移


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
※主世帯
1 住宅に 1 世帯が住んでいる場合はその世帯を「主世帯」、
1 住宅に 2 世帯以上が住んでいる場合には、
そのうち主な世帯(家の持ち主や借り主の世帯など)を主世帯という
建て方別住宅数の推移
建て方別に住宅ストックをみると、
近年の一戸建て住宅の割合は減少傾向であるのに対し、
長屋建住宅及び木造の共同住宅の割合はほぼ横ばい、
非木造の共同住宅の割合は増加傾向で推移しています。
建て方別住宅数の推移


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
居住世帯と所有の関係
仙台市の居住世帯は、
平成 30 年の所有の関係別主世帯数を見ると、
全体では、
持ち家割合は 46.7%であり、
一方、
民営借家は 42.9%、
公営の借家は 2.9%であるなど、
持ち家と借家の割合はほぼ半分となっています。
世帯の型別に所有の関係を見ると、
持ち家割合が高いのは、
高齢者夫婦と65 歳以上の高齢者がいる世帯で75%以上となっています。
世帯の型別所有の関係別主世帯割合


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
≪所有の関係≫
持ち家…そこに居住している世帯が全部または一部を所有している住宅
公営の借家…都道府県、市区町村が所有又は管理する賃貸住宅
UR・公社の借家…都市再生機構や住宅供給公社・住宅協会・開発公社などが所有又は管理する賃貸住宅
民営借家…国・都道府県・市区町村・公団・公社以外のものが所有又は管理する賃貸住宅
給与住宅…社宅、公務員住宅などのように、会社、団体、官公庁などが所有又は管理して、
その職員を職務の都合上又は給与の一部として居住させている住宅
各区の住宅の建設時期
各区の建築時期別住宅数の割合を見ると、
若林区、太白区、宮城野区では
築 40 年を超える昭和 55 年以前の住宅の割合が
市平均の 14.1%よりも高い約 15%を占めており、
泉区では 12.6%と最も低くなっています。
各区の建設時期別住宅数の割合(平成 30 年)


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
空き家数等の推移
仙台市の空き家数は、
平成 30 年に 63,800 戸で、
このうち「賃貸用又は売却用の住宅」46,600 戸及び別荘などの
「二次的住宅」1,200 戸を除いた、
具体的な用途が決まっていない「その他の住宅」は、
16,000 戸となっています。
仙台市の空き家率は、
平成 30 年で 11.1%と全国平均の 13.6%を下回っています。
仙台市の空き家数、
空き家率いずれも平成 20 年までは増加傾向でしたが、
平成 25 年に減少し、
平成 30 年には再び増加に転じています。
平成 25 年の減少は平成 23年3月 11 日に発生した
東日本大震災の影響を受けたものと推定されます。
平成 25年と平成 30 年を比較すると、
「賃貸用又は売却用の住宅」は増加しており、
「その他の住宅」は減少しています。
種類別の空き家数等の推移


※四捨五入しているため種類別の合計は総数と合わない。 資料:住宅・土地統計調査(総務省)
空き家のうち「その他の住宅」の状況
仙台市の平成 30 年の「その他の住宅」
16,000 戸の建物種類別内訳は、「一戸建」8,100 戸、
次いで「共同住宅」7,000 戸となっています。
それぞれに対して、
腐朽・破損ありの住宅は、「一戸建」で 2,500 戸、
「共同住宅」で 1,100 戸となっており、
「その他の住宅」で腐朽・破損ありの住宅の全体で 3,800戸となっています。
「その他の住宅」の建物種類別内訳(平成 30 年)


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
各区別の状況
平成 30 年の調査結果を各区別に見ると、空き家率は、青葉区が市平均 11.1%より高い 13.3%、最も低いのは泉区の 7.7%となっています。また、空家の中で「その他の住宅」が住宅総数に占める割合は、青葉区 3.4%、宮城野区 3.0%、若林区3.3%で市平均 2.8%より高くなっており、泉区は 1.6%と最も低くなっています。
市内各区の種類別の空き家数等の状況(平成 30 年)


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
政令指定都市との比較
空き家率の比較
仙台市の空き家率を他の政令指定都市と比較すると、
20 市中6番目に低い状況となっています。
空き家率等の政令指定都市間比較(空き家率順)(平成 30 年)


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
「その他の住宅」率の比較
本市の住宅総数に占める「その他の住宅」に該当する空き家の割合は、
政令指定都市の平均 3.9%を下回る最低水準の 2.8%で、
20 政令指定都市中2番目に低い状況となっています。
また、
「その他の住宅」のうち、
腐朽・破損ありの空き家の割合でも他の政令指定都市に比べて 0.6%と最低水準となっています。
その他の住宅率等の政令指定都市間比較
(その他の住宅率順)(平成 30 年)


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
既存住宅の市場流通の割合
仙台市の既存住宅の市場流通シェアの状況は、
全国平均より低く、
他の政令指定都市と比較しても下位の方となっており、
住宅の購入等の際の既存住宅の購入ニーズの低さが読み取れます。
既存住宅の流通シェアの政令指定都市間の比較(平成 30 年)


資料:住宅・土地統計調査(総務省)
※既存住宅の市場流通シェア:持ち家総数(住宅の購入・新築・建て替え等)に対する中古住宅を購入した割合
空家等の所有者等の意識・課題
今後の利用意向
全国の傾向となりますが、
国土交通省が令和元年に実施した調査では、
「その他の住宅」の所有者のうち、
今後5年程度の利用意向については
「空家にしておく(物置を含む)」が 44.6%、
次いで「取り壊す」が 21.9%となっています。
「その他の住宅」所有者の利用意向(全国)


資料:令和元年空き家所有者実態調査報告書(国土交通省住宅局)
空家にしておく理由
「空家にしておく(物置を含む)」理由は、
「物置として必要」が 60.3%と最も多く、
次いで「解体費用をかけたくない」46.9%、
「さら地にしても使い道がない」36.7%となっています。
空家にしておく理由(全国)


資料:令和元年空き家所有者実態調査報告書(国土交通省住宅局)
賃貸・売却する上での課題
賃貸・売却する上での課題としては「買い手・借り手の少なさ」が最も多く、
次いで「住宅の傷み」、
「設備や建具の古さ」といった住宅の品質への不安、
「リフォーム費用」となっています。
賃貸・売却する上での課題(全国)


資料:令和元年空き家所有者実態調査(国土交通省住宅局)
中古住宅を取得しなかった理由
購入する側の課題について、
分譲戸建住宅を取得した世帯の中古住宅を購入しなかった理由を見ると、
「新築の方が気持ち良いから」68.1%のほか、
「リフォーム費用などで割高になる」28.3%、
「隠れた不具合が心配だった」26.4%、
「耐震性や断熱性など品質が低そう」20.4%など、
住宅の品質への不安が見られ、
既存住宅の質の確保・向上と購入側の理解の促進が
必要とされることが見て取れます。
分譲戸建住宅を取得した世帯の中古住宅を購入しなかった理由(全国)


資料:令和元年度住宅市場動向調査結果(国土交通省)
空家実態把握調査の結果
令和元年度に仙台市が市内 30 地区を抽出し実施した空家実態把握調査では、
30 地区平均の空き家率は 5.1%と、
平成 30 年住宅・土地統計調査による本市の空き家率 11.1%を大きく下回っています。
戸建て住宅の空き家率は 1.7%、
共同住宅の空き家率は 11.6%となっており、
共同住宅の方が高くなっています。
地区ごとの空き家率の差はありましたが、
高齢化率や交通環境などの地域特性による空き家実態の明らかな傾向は見受けられない状況でした。
空家実態把握調査位置図


仙台市の管理不全な空き家等の状況
管理不全な空家等の状況
仙台市に所有者等の管理が行き届いていないとして、
市民から相談や情報提供を受付した件数は、
令和2年度には 289 件、
令和3年度(12 月末時点)は 276 件でした。
受付件数はここ数年横ばい傾向にあります。
一方、改善済みまたは調査対象外として対応が終了した件数は、
平成 28 年の 415 件をピークに減少しています。
管理不全な空家等の件数は平成 27 年をピークに減少傾向にありましたが、
近年は微増傾向です。
法施行後に地域住民から相談や情報提供があった管理不全な空家等の状況


≪管理不全な空家等の例≫


法が施行された平成 27 年から令和3年 12 月末までに、
所有者等の管理が行き届いていないとして、
市民から相談や情報提供を受け付けた相談受付件数は2,547件あり、
そのうち現況調査を行った数は 2,547 件、
調査の結果、空家等ではなかった、概ね管理が行き届いていたなどとして、
1,102 件が対象外となり、
残りの 1,445件が管理不全な空家等(改善済み、繰り返しによる重複を含む延べ件数)
として把握された件数になります。
その 1,445 件のうち 1,133 件については、
建築物等の除却や管理不全箇所の改善が行われ、
残る 312 件が現存する管理不全な空家等となっています。
現存する管理不全な空家等 312 件の内訳は、
特定空家等が 29 件、
特定空家等以外が 283 件となっています。
管理不全な空家等の状況(令和3年 12 月末時点)


資料:仙台市
管理不全な空家等の主な問題
仙台市で把握している管理不全な空家等の主な問題は、
7割以上が雑草・樹木の繁茂によるものです。
また、
現存する管理不全な空家等の主な未改善理由は、
「所有者からの反応なし」が最も多く、
次いで「調査中・その他」となっています。
特に特定空家等においては、
「調査中・その他」「解体費等捻出困難」を理由とするものが比較的多い状況です。
管理不全な空家等の状況(令和3年 12 月末時点)


資料:仙台市
現存する管理不全な空家等の未改善理由(令和3年 12 月末時点)


資料:仙台市
管理不全な空家等の分布状況
令和3年 12 月末の管理不全な空家等
(改善済みを含む、繰り返しによる重複を含む延べ件数)
1,445 件の分布状況は下図のとおりです。
地域で見ると、
若林、台原、八木山本町、向山などが
比較的件数が多い地域となります。
もう少し広い範囲の分布状況を見ると、
北から、将監から山の寺、台原から南光台、
向山から八木山の各地域にかけて、
また若林、長町周辺が多い状況です。
情報提供等があった管理不全な空家等の分布状況(令和3年 12 月末時点)


資料:仙台市
人口集中地区の変遷図と比べると、
概ね市内中心部の古くからの街から、
外に向かって徐々に比較的新しい街が形成されていったことが確認できます。
人口集中地区と情報提供等があった管理不全な空家等と重ねると、
管理不全な空家等は、
色の濃い比較的古い街で多く発生していることがうかがえます。
情報提供等があった管理不全な空家等と人口集中地区(DID)の変遷図(令和3年 12 月末時点)


資料:平成 27 年国勢調査(総務省統計局)、仙台市
これまで見てきたように、
人口や世帯数の変化、高齢者世帯の増加、家屋の老朽化などを背景に、
今後、郊外や古い住宅団地を中心に空家等の増加が懸念されます。
また、
既存住宅の活用にあたっては所有者・購入者双方で課題が伺えます。
空家等対策については、
個別の案件に対し様々な事情を考慮しきめ細やかに対応していくことはもとより、
中長期的な対策も含めて、
大きな視点で社会全体や空家等を巡る状況の変化を捉えながら、
その対策を推進、検討していく必要があります。
株式会社ホワイトハウスでは、空き家に関する相談を承っております。お気軽にお問い合わせください。