不動産を売却するときには、さまざまな費用がかかります。
その中でも「仲介手数料」は、多くの人が気にするポイントの一つです。
特に、初めて不動産を売却する人にとっては、「仲介手数料って何?」「どのくらいお金がかかるの?」と疑問に思うことが多いでしょう。
この記事では、仲介手数料とは何か、どのように計算されるのか、どのタイミングで支払うのか、さらに仲介手数料を抑える方法や注意点などを、分かりやすく解説していきます。
1. 仲介手数料とは?
仲介手数料とは、不動産会社(不動産仲介業者)に支払う手数料のことです。不動産を売却するときは、一般的に不動産会社に依頼して買主を探してもらいます。
その売却活動の対価として、不動産会社に支払うお金が「仲介手数料」です。
【不動産会社が提供する主なサービス】
不動産会社は、売主と買主をつなぐ役割を果たします。
具体的には、以下のような業務を行います。
✅ 物件の査定と適正価格の設定
- 不動産の価値を評価し、市場価格に基づいた適切な売却価格を提案。
- 近隣の売却事例を調査し、売却成功の可能性が高い価格を算出。
✅ 広告や販売活動(インターネット、チラシ、オープンハウスなど)
- SUUMO、HOME’S、アットホームなどの不動産ポータルサイトへの掲載。
- 物件の写真撮影、魅力的なキャッチコピー作成。
- チラシやダイレクトメールを利用した宣伝活動。
- オープンハウスの開催、内覧会の手配。
✅ 購入希望者の対応(問い合わせ対応、内覧の手配)
- 買主からの問い合わせ対応。
- 物件の魅力をアピールする説明。
- 実際の内覧の案内とフォローアップ。
✅ 契約手続きや重要事項の説明
- 売買契約書の作成、契約の進行管理。
- 重要事項説明書の準備と説明。
- 手付金やローン手続きのサポート。
✅ 売買契約の締結サポートと引き渡し手続き
- 売主・買主間の契約締結をサポート。
- 物件の引き渡しに関するスケジュール調整。
- 売買代金の決済手続き。
- 司法書士と連携し、登記手続きを円滑に進める。
このように、不動産会社は売却活動のあらゆる面でサポートを提供し、売主がスムーズに不動産を売却できるようにします。
その対価として、仲介手数料が発生するのです。
また、仲介手数料の金額は、提供されるサービスの質や販売活動の規模によって変わることもあります。
売却を依頼する際には、どのようなサービスが含まれているのかをしっかり確認することが重要です。
2. 仲介手数料はいくら? 計算方法を解説!
仲介手数料の金額は、法律で上限が決められています。
その上限は、以下の計算式で求めることができます。
【仲介手数料の上限計算式】
売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税
この計算式を使うと、仲介手数料の上限額が分かります。
【具体例】
たとえば、3,000万円のマンションを売却する場合の仲介手数料は以下のようになります。
3,000万円 × 3% + 6万円 = 96万円
さらに、消費税(10%)を加えると、
96万円 × 1.1 = 105万6,000円
となります。
つまり、3,000万円の不動産を売却すると、不動産会社に支払う仲介手数料の上限は 105万6,000円 になるということです。
【価格帯ごとの仲介手数料の例】
売却価格 | 仲介手数料(税抜) | 消費税(10%) | 総額 |
---|---|---|---|
1,000万円 | 36万円 | 3万6,000円 | 39万6,000円 |
2,000万円 | 66万円 | 6万6,000円 | 72万6,000円 |
3,000万円 | 96万円 | 9万6,000円 | 105万6,000円 |
5,000万円 | 156万円 | 15万6,000円 | 171万6,000円 |
1億円 | 306万円 | 30万6,000円 | 336万6,000円 |
このように、売却価格が高くなるほど仲介手数料の金額も大きくなります。
また、売却価格が400万円以下の場合は、特別な計算式が適用され、仲介手数料の上限は「売却価格 × 4% + 2万円 + 消費税」となります。
これは比較的低価格の物件の売却時に適用されるルールです。
3. 仲介手数料はいつ支払うの?
仲介手数料は、一度に全額を支払うわけではありません。
一般的には、以下のように 2回 に分けて支払います。
【支払うタイミング】
- 売買契約を結ぶとき(契約時) … 仲介手数料の半額を支払う。
- 不動産を引き渡すとき(決済時) … 残りの半額を支払う。
例えば、先ほどの例で 105万6,000円 の仲介手数料が発生する場合、
- 契約時に約52万8,000円
- 引き渡し時に約52万8,000円
のように、2回に分けて支払うのが一般的です。
【注意点】
- 売買契約が成立しなかった場合、通常は仲介手数料は発生しません。
- 売主が途中で売却を取りやめた場合、不動産会社がすでに広告活動を行っていた場合は、一定の費用を請求されることがあります。
- 不動産会社によっては、一括での支払いを求めるケースもあるため、契約前にしっかり確認しましょう。
- 支払い方法は銀行振込が一般的ですが、不動産会社によってはクレジットカード払いに対応していることもあります。
仲介手数料の支払いについては、不動産会社との契約内容をしっかり確認し、トラブルを避けるために細かい条件を理解しておくことが大切です。
4. 仲介手数料を安くすることはできる?
不動産会社の仲介手数料は 法律で上限が決められていますが、必ずしも上限額を支払わなければならないわけではありません。
不動産会社によっては、以下のような方法で 仲介手数料を割引 してくれることがあります。
【仲介手数料を抑える方法】
- 複数の不動産会社に見積もりを依頼する
不動産会社によって手数料の設定が異なることがあるため、複数の会社を比較して交渉してみましょう。
一括査定サイトを利用すると、複数の不動産会社から見積もりを取ることができ、手数料の比較がしやすくなります。 - 手数料の交渉をしてみる
すべての不動産会社が交渉に応じるわけではありませんが、状況によっては手数料を下げてくれる場合もあります。
例えば、「売却の見込みが高い物件」「短期間で売却できそうな物件」などは、不動産会社も積極的に対応してくれる可能性があります。 - 手数料無料または割引の不動産会社を利用する
最近では、仲介手数料無料や割引キャンペーンを行っている不動産会社も増えてきています。
特にネット系の不動産会社では、仲介手数料を半額や無料にするケースもあります。
【仲介手数料を抑える際の注意点】
ただし、仲介手数料が安い不動産会社の場合、以下のようなリスクがあるため注意が必要です。
✅ 売却活動が不十分になる可能性がある
- 広告費や人件費を抑えるため、物件の宣伝が十分に行われない場合があります。
- 物件が長期間売れ残る可能性があるため、適切な販売戦略をしっかり確認しましょう。
✅ 担当者の対応が手薄になる可能性がある
- 手数料が安い分、担当者が多数の案件を抱えており、細やかな対応が難しくなることがあります。
✅ 売却価格の交渉力が低下する可能性がある
- 仲介手数料を割引することで、売却価格の交渉にあまり力を入れてもらえない場合があります。
不動産会社を選ぶ際は、「手数料の安さ」だけでなく、「売却のスピード」や「サポートの充実度」も考慮することが大切です。
5. 不動産売買における仲介手数料を巡る裁判事例
不動産売買において、仲介手数料の支払い義務や金額、媒介契約の有無を巡って裁判が起こることがあります。
不動産会社と売主・買主との間での認識の違いや、契約内容の不明確さが原因となることが多く、法的な争いに発展するケースも少なくありません。
以下に具体的な裁判事例を紹介します。
1. 媒介契約の成立を巡る争い(2021年12月24日・東京地方裁判所判決)
この事例では、不動産仲介業者が売主に対して仲介手数料を請求しました。
しかし、売主との間に正式な書面による専任媒介契約が交わされておらず、さらに取引の過程で物件の条件が変更されていたため、裁判所は媒介契約の成立を認めませんでした。
裁判所の判断では、媒介契約が成立するためには、不動産会社と売主の間で明確な合意があり、それが書面で記録されている必要があるとされました。
さらに、契約内容が途中で変更された場合には、新たな合意が必要であり、これがない場合には契約の有効性が認められないとされました。
この判決は、不動産会社と売主が媒介契約を結ぶ際には、契約書をしっかりと交わし、取引条件の変更がある場合には双方の合意を取り直すことが重要であることを示しています。
2. 仲介手数料の返還請求(2022年6月22日・東京地方裁判所判決)
このケースでは、宅地建物取引業者(不動産会社)が不動産取引を仲介する際に、法律で定められた報酬の上限を超える仲介手数料を受領していたことが問題となりました。
売主は、契約締結後に手数料が法定上限を超えていたことに気づき、不動産会社に返還を求めました。
しかし、不動産会社は「契約時に合意しているため、返還義務はない」と反論しました。
裁判所は、宅地建物取引業法で定められた手数料の上限を超えた請求は違法であり、たとえ売主が契約時に合意していたとしても、その支払いは無効であると判断しました。
その結果、不動産会社は超過分の手数料を売主に返還するよう命じられました。
この事例は、仲介手数料の金額を事前に確認することが重要であり、契約時に提示された手数料が適正かどうかをしっかり調べる必要があることを示しています。
契約後でも違法な請求があった場合は、法的に返還を求めることが可能です。
3. 仲介手数料の支払い義務に関する争い(2021年3月29日・東京地方裁判所判決)
この事例では、不動産会社と売主が結んだ媒介契約に「契約期間が自動更新される」条項が含まれていました。
売主は契約期間が終了したと考えていたが、不動産会社は自動更新が適用されるとして、引き続き仲介手数料の請求を行いました。
売主は「契約期間が終了した以上、新たな契約がない限り、仲介手数料を支払う義務はない」と主張しました。
一方、不動産会社は「契約時に自動更新の条項があり、売主が異議を申し立てなかったため、契約は継続している」と反論しました。
裁判所は、宅地建物取引業法において媒介契約の有効期間は最長3カ月と定められているため、それを超えて自動更新される契約条項は無効であると判断しました。
結果として、不動産会社の手数料請求は認められませんでした。
この判決は、不動産の媒介契約には法律で定められた期間があるため、契約の更新や継続については慎重に確認する必要があることを示しています。
売主や買主は、契約書に記載された内容をよく理解し、不明点は事前に確認することが大切です。
これらの事例から、不動産売買における仲介手数料に関するトラブルを防ぐためには、以下のポイントに注意することが重要です。
✅ 媒介契約の成立には書面での合意が必要であり、契約内容の変更があった場合は新たな合意を取るべきである。
✅ 仲介手数料の上限を超える請求は違法であり、支払い後でも返還請求が可能な場合がある。
✅ 媒介契約の期間には法律上の制限があり、自動更新の条項は無効となる場合がある。
✅ 契約の内容を事前によく確認し、不明点があれば専門家に相談することが重要である。
不動産の売買では、契約の内容をよく確認し、事前に不動産会社との認識をすり合わせることが、トラブルを未然に防ぐために非常に重要です。
安心して取引を進めるために、契約前に専門家の意見を聞きながら進めることをおすすめします。
まとめ
仲介手数料とは、不動産会社に支払う手数料のことで、売却価格に応じて計算されます。
✅ 計算式は「売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税」
✅ 支払いは契約時と引き渡し時の2回に分けるのが一般的
✅ 契約が成立しなければ仲介手数料は発生しない
✅ 不動産会社によっては手数料の交渉や割引も可能
不動産を売却するときは、仲介手数料がどのくらいかかるのかを事前に確認し、納得のいく形で進めることが大切です。売却を検討している人は、まずは信頼できる不動産会社に相談してみましょう。
また、売却にかかる費用は仲介手数料だけではありません。以下のような 他の費用 も考慮することが重要です。
✅ 登記費用(所有権移転登記や抵当権抹消費用)
✅ 譲渡所得税(売却益が出た場合の税金)
✅ リフォーム費用(必要に応じて)
✅ 引っ越し費用(売却後の新居への移動)
売却後の資金計画をしっかり立てることで、次の住まいへのスムーズな移行が可能になります。
成功する不動産売却のために、事前準備をしっかり行いましょう。