近年、日本では少子高齢化の影響で空き家が増え続けています。親族が亡くなり、突然空き家を相続することになったものの、「どう処分すればいいのか分からない」「相続放棄すれば関係なくなるのでは?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
しかし、相続放棄をしても空き家の管理責任が完全になくなるわけではありません。
この記事では、相続放棄後に残る管理責任や、具体的な空き家の処分方法について詳しく解説していきます。
1. 空き家を相続放棄したらどうなる?
「相続放棄」とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産や負債を一切引き継がないことを意味します。
相続放棄をすれば、空き家の所有権も相続しないため、基本的にはその管理や売却の責任も負わなくなると思われがちです。
しかし、管理責任は一定期間残る!
民法940条には、「相続放棄をした相続人は、相続財産の管理責任を負う」と定められています。
これは、次の相続人や相続財産管理人が決まるまでの間、最低限の管理をしなければならないというものです。
例えば、
- 放置した空き家が倒壊し、通行人にケガをさせた場合
- 不法投棄や放火などの犯罪行為の温床となった場合
- 老朽化した建物の崩壊によって隣接する建物や道路に損害を与えた場合
- 窓ガラスの破損や屋根の劣化が進行し、強風や台風で飛散して事故を引き起こした場合
これらの問題が発生すると、最終的に責任を問われる可能性があります。
そのため、相続放棄をしたからといって、完全に空き家の管理から解放されるわけではないことを理解しておきましょう。
また、相続放棄をしても空き家の固定資産税が一時的に課される場合があります。
次の所有者が確定するまでは「管理義務者」として扱われることがあるため、行政からの通知が届く可能性があることも考慮しておくべきです。
さらに、空き家が長期間放置されている場合、自治体によって「特定空き家」に指定される可能性があります。
特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置が解除され、通常の6倍の税負担が発生することもあるため、早めの対策が重要です。
そのため、相続放棄を考えている場合は、まずは専門家(弁護士・司法書士)に相談し、相続放棄後の管理責任やリスクを正しく把握しておくことが大切です。
空き家の管理責任を解除する方法
空き家の管理責任を完全に解除するためには、家庭裁判所へ申し立てを行い「相続財産管理人」を選任してもらう必要があります。
相続財産管理人が決定し、空き家が国庫に帰属されると、元の相続人の管理責任は完全になくなります。
ただし、この手続きには時間がかかる場合があり、申し立てにかかる費用(裁判所の手数料や相続財産管理人への報酬)も発生するため、事前に弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
2. 相続放棄後の管理責任をどうすればいい?
相続放棄をしても、次の相続人や管理人が決まるまでの間、最低限の管理を行う必要があります。
では、具体的にどのような管理をすればいいのでしょうか?
最低限行うべき管理
- 建物の確認
- 老朽化や損壊が進行していないかを確認する。
- 倒壊の恐れがある場合、行政に相談する。
- 台風や地震などの災害時には追加の点検を実施。
- 外壁や屋根の破損がないかを定期的にチェックする。
- 防犯対策
- 施錠を確認し、不法侵入や放火のリスクを減らす。
- 必要に応じて、防犯カメラや警備会社のサービスを利用する。
- 近隣住民と連携し、不審者情報の共有を行う。
- 郵便受けにチラシが溜まると空き家だと気づかれるため、定期的に整理する。
- 草木の手入れ
- 伸びすぎた草木が近隣住民の迷惑にならないよう管理する。
- 不法投棄されるのを防ぐため、定期的な巡回を行う。
- 雑草が生い茂ると害虫の発生源になるため、定期的に除草。
- 樹木の枝が道路にはみ出していないか確認し、必要に応じて剪定する。
- 近隣住民との連携
- 空き家の管理状況を近隣住民に伝え、異常があれば連絡してもらうようにする。
- 近隣とのトラブルを未然に防ぐため、自治会などと相談する。
- 近隣住民に緊急時の連絡先を伝えておくことで、問題発生時にすぐ対応できるようにする。
- 自治体の支援制度の活用
- 一部の自治体では、空き家の管理を支援する補助金制度を提供している。
- 空き家対策の専門窓口に相談し、適切なアドバイスを受ける。
- 管理を専門業者に委託する
- 自身での管理が難しい場合は、空き家管理サービスを提供する専門業者に依頼する。
- 定期的な巡回・清掃・修繕を行うプランを利用すると負担を軽減できる。
管理の負担が大きい場合は、地域の行政や専門業者に相談し、管理を委託することも検討しましょう。
3. 空き家の処分方法
相続放棄をした後、次の相続人や管理人が決まったとしても、空き家を放置し続けることはリスクが伴います。
空き家を適切に処分する方法をいくつか紹介します。
① 売却する
最も一般的な空き家の処分方法は、売却することです。
- 不動産会社に相談する
- 近隣の不動産会社に査定を依頼し、売却価格を把握する。
- できるだけ早く売却したい場合は、買取業者に相談するのも一つの方法。
- 地元の不動産会社と全国展開の不動産会社の両方に相談し、比較検討する。
- 空き家バンクを利用する
- 各自治体が運営する「空き家バンク」に登録し、買い手を探す。
- リフォーム費用を補助してくれる自治体もあるため、活用を検討。
- 地域の移住希望者や企業にアプローチすることで、売却成功率を上げる。
- オークションや不動産投資家向けの売却を検討する
- オンラインの不動産オークションを利用し、競争入札で売却価格を高める。
- 不動産投資家向けの市場で売却することで、素早い現金化が可能。
- 投資向けのサイトや専門業者に相談し、適切な売却戦略を立てる。
② 解体する
- 解体費用の補助制度を活用
- 一部の自治体では、空き家の解体費用を補助してくれる制度がある。
- 解体後の土地活用も考えておくことが大切。
- 解体後の土地の活用方法を検討
- 駐車場にする、賃貸用地として貸し出すなどの選択肢も。
- 太陽光発電用地やシェア畑として貸し出すことで継続的な収入を得る。
- 小規模な商業施設や貸し倉庫として活用し、収益化を図る。
4. 空き家の管理や処分をスムーズに進めるために
① 行政の相談窓口を活用
- 自治体の空き家対策課
- 各自治体には「空き家対策課」や「住まいの相談窓口」があり、相談を受け付けています。
- 相談すれば、売却・活用・解体の支援策を教えてもらえるだけでなく、補助金制度についての情報も得られます。
- 空き家の特定管理対象として認定されると、自治体からの補助金やサポートを受けられる場合があります。
- 自治体のホームページや窓口で最新の助成金や税制優遇措置の情報を確認しましょう。
② 空き家管理サービスを利用する
- 定期巡回サービス
- 空き家の管理を代行する業者があり、適正な管理を継続できます。
- 定期的な清掃や通風、設備の点検を行い、劣化を防ぐことが可能です。
- 水漏れや害虫被害などのトラブルを早期に発見し、必要に応じて修繕を依頼できるメリットがあります。
- 不動産会社に管理を委託する
- 売却までの期間、管理を専門家に任せることで手間を省けます。
- 売却が決まるまでの間、賃貸管理会社と契約し、一時的に貸し出す方法も検討できます。
- 賃貸収入を得ることで、管理費用を補填できる可能性もあります。
③ 不動産会社に不動産査定を依頼する
- 売却を前提とした査定を依頼
- 空き家の価値を知ることで、売却や活用の判断材料になります。
- 近隣の相場と比較し、最適な売却戦略を立てることが可能です。
- 高く売るためのリフォームや修繕のアドバイスを受けられることもあります。
- 複数の不動産会社に査定を依頼することで、より正確な市場価格を把握し、適正価格で売却できるようになります。
- 売却が難しい場合は、空き家買取専門の業者に相談し、早期売却の可能性を探ることも検討しましょう。
空き家の管理会社の選び方:初心者でもわかるポイント
空き家を適切に管理するために、専門の管理会社を利用する方法があると説明しました。
しかし、「どの会社を選べばいいのかわからない」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
ここでは、初心者でもわかりやすいように、空き家の管理会社の選び方を解説します。
1. 空き家管理会社とは?
空き家管理会社は、所有者に代わって定期的に空き家を巡回し、適切なメンテナンスや管理を行う会社です。
空き家を放置すると、建物の劣化や不法侵入のリスクが高まるため、管理会社に依頼することで安全性を確保できます。
2. 空き家管理会社を選ぶ際のポイント
① 提供サービスの内容を確認する
管理会社によって提供するサービスが異なります。以下のようなサービスを提供しているか確認しましょう。
✅ 定期巡回:建物の外観や周辺環境を定期的に確認
✅ 通風・換気:室内の湿気やカビの発生を防ぐ
✅ 郵便物の整理:ポストに郵便物が溜まると空き家と気付かれやすくなるため、整理する
✅ 庭や敷地の手入れ:草刈りや庭木の剪定など
✅ 修繕対応:屋根や外壁の劣化チェック、必要に応じた修繕手配
✅ 防犯対策:防犯カメラの設置や不審者対策
自分の空き家の状況に合ったサービスを提供しているか確認しましょう。
② 管理料金を比較する
空き家の管理費用は会社によって異なります。一般的な料金相場は以下の通りです。
- 基本プラン(巡回・換気・郵便整理):月額3,000円〜10,000円
- 庭の手入れ・修繕付きプラン:月額10,000円〜30,000円
- フルサポートプラン(売却や賃貸の相談含む):月額30,000円以上
料金だけでなく、提供されるサービスとのバランスを考えて選びましょう。
③ 地元の会社か大手の会社かを選ぶ
管理会社には、地域密着型の会社と全国展開している大手の会社があります。
それぞれの特徴を知って、自分に合った会社を選びましょう。
✔ 地元の会社の特徴
- 地域の空き家事情に詳しい
- 細やかな対応が期待できる
- 料金が比較的リーズナブル
✔ 大手の会社の特徴
- サービスの品質が一定レベル以上で安心
- 充実したサポート体制がある
- 全国どこでも対応可能
地方にある空き家であれば、地元の管理会社のほうが適切な対応をしてくれる場合が多いです。
一方、長期間の管理が必要であれば、大手の会社も検討するとよいでしょう。
④ 口コミや評判をチェックす
管理会社を選ぶ際には、実際に利用した人の口コミや評判を確認しましょう。
以下の方法で調べるのがおすすめです。
- インターネットの口コミサイトをチェック
- 自治体の相談窓口で評判を聞く
- 近所の不動産会社に紹介してもらう
特に「対応が丁寧か」「報告がきちんとあるか」など、実際の管理状況についての口コミを確認するとよいでしょう。
⑤ 直接問い合わせて対応を確認する
気になる管理会社が見つかったら、実際に問い合わせてみましょう。
その際、以下のポイントをチェックします。
✅ 問い合わせ時の対応が丁寧か
✅ 契約内容が明確か(隠れた費用がないか)
✅ どのくらいの頻度で報告を受けられるか
✅ 万が一のトラブル(台風や地震など)の際の対応がどうなっているか
対応が良く、契約内容が明確な会社を選ぶことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
3. 管理会社選びは慎重に!
空き家の管理会社を選ぶ際は、以下のポイントを押さえましょう。
✅ 提供されるサービスの内容をチェック(巡回、換気、防犯、修繕など)
✅ 料金プランを比較し、コストとサービスのバランスを考える
✅ 地元の会社か大手の会社か、自分の空き家に合った方を選ぶ
✅ 口コミや評判を調べ、信頼できる会社を選ぶ
✅ 実際に問い合わせて、対応の良さを確認する
空き家の管理は放置すると大きな問題につながる可能性があります。信頼できる管理会社を選び、安心して任せられるようにしましょう。
まずは複数の会社に問い合わせて、自分に合った会社を見つけることが大切です。
まとめ
空き家を相続放棄しても、一定期間は管理責任が残るため、完全に手を引くことはできません。
そのため、できるだけ早めに適切な処分方法を検討することが重要です。
✅ 相続放棄後も次の管理人が決まるまで最低限の管理が必要
✅ 売却・寄付・解体など、適切な処分方法を選ぶ
✅ 自治体のサポートや専門家のアドバイスを活用する
✅ 管理を専門業者に依頼し、負担を軽減する選択肢を検討する
✅ 将来的な空き家問題を避けるために、早めの対策を講じる
空き家の放置はさまざまなリスクを伴いますが、早めに行動することで適切に対処することができます。
まずは、自治体や不動産会社に相談し、自分に合った方法を見つけましょう。
積極的に情報を収集し、最適な選択肢を選び、安心して空き家問題を解決しましょう。